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デジタルと店舗の融合!LINE公式アカウントを活用したクラフトマルシェの新たな顧客体験

クラフトマルシェ by Kirin City

キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 有澤涼一氏(写真左)
キリンシティ株式会社 新ブランド開発リーダー 渡辺慎吾氏(写真中央)
キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 若木弦也氏(写真右)

キリンシティ株式会社(以下、キリンシティ)が運営する飲食店「クラフトマルシェ by Kirin City」(以下、クラフトマルシェ)では、LINE公式アカウントを通じて注文から会計まで完結するシステムを導入しました。デジタルと店舗の接客を融合した新たな顧客体験を実現した同社の取り組みについて、キリンホールディングス株式会社(以下、キリンホールディングス)の有澤涼一氏(以下、有澤氏)と若木弦也氏(以下、若木氏)、キリンシティの渡辺慎吾氏(以下、渡辺氏)に話を伺いました。

目的
  • デジタルを駆使して飲食店におけるユーザーのストレスや課題を解消したい
  • 来店後もユーザーと継続的な関係を構築したい
施策
  • 店舗のLINE公式アカウントを通じ、注文から支払いまでが完結する「セルフオーダー&ペイ」システムを導入
  • ユーザーごとの情報を元にメッセージを送り分けて最適な情報を配信
効果
  • 注文時にユーザーが感じるストレスの軽減に成功
  • 店内業務のオペレーション工数やコストが削減
  • ユーザーと店員の接触回数が減少し、新型コロナウイルスの感染対策としても貢献

注文から支払いまで、LINE公式アカウントで完結する顧客体験を実現

2019年12月、東京・恵比寿にオープンしたクラフトマルシェは、11~16種類のクラフトビールと、クラフトビールに合う料理を豊富に提供している人気のビアレストランです。同店では、メニューの閲覧から注文、さらには支払い(※1)までLINE公式アカウントで完結する「セルフオーダー&ペイ」システムを導入しています。

 

※1 支払いは現金、LINE Payなどの電子決済やクレジットカードが選択可能

 

店内の客席にはメニューの代わりにQRコードが描かれたボードが設置されていて、ユーザーはそのQRコードを読み込み、「クラフトマルシェ by Kirin City」のLINE公式アカウントを友だち追加します。すると、LINE公式アカウントから「あいさつメッセージ」として注文用のURLを取得するための方法が案内されます。手順通りに進めるとメニュー画面に切り替わり、そのまま注文ができる仕組みです。複数人で来店し、ユーザーがそれぞれのスマートフォンから個別に注文をしても、注文履歴や合計金額は座席ごとにまとめて表示されます。

座席に設置されているQRコードを読み込み、クラフトマルシェのLINE公式アカウントと友だちになると、注文用のURLを取得するための案内が送られます(写真左)。タップするとメニューが閲覧できます(写真右)。

自分のスマートフォンでメニューを見ながら注文ができるこの「セルフオーダー&ペイ」のシステムについて、クラフトマルシェの店長を務める渡辺氏は次のように説明します。

 

「タブレットを使って注文できる仕組みは他店でもよく見かけますが、1テーブル1台しか備えていない店舗が多いと思います。グループで来店すると自分が見たい時にすぐメニューを見られるとは限りませんし、タブレットに近い人が注文係になってしまうこともあります。その点、自分のスマートフォンから注文ができる『セルフオーダー&ペイ』であれば、自分のタイミングでメニューを確認して注文ができるため、『どれだけ頼んだか途中経過を見たい』『注文したいときに店員が見つからない』などのお客さまのストレスの軽減につながったのではないかと思います」(渡辺氏)

キリンシティ株式会社 新ブランド開発リーダー 渡辺 慎吾氏

キリンシティ株式会社 新ブランド開発リーダー 渡辺 慎吾氏

来店後も継続的にコミュニケーションができるLINEに期待

従来の店舗とは異なる新しい顧客体験を提供しているクラフトマルシェですが、デジタルを取り入れた新たな業態の店舗プロジェクトが始動したのは、2018年10月のこと。その背景にあったのは、37周年を迎えたキリンシティブランドのコアターゲット層の高齢化です。来店者の多くが50〜60代を占めていたこともあり、20〜30代の若年層の新規顧客開拓を目指しました。

 

プロジェクトでは、デジタルを駆使して飲食店におけるユーザーのストレスや課題を解消すること、そして来店したユーザーとの継続的な関係構築が求められました。そこで、2019年1月からキリンホールディングス 経営企画部 DX戦略推進室の有澤氏と若木氏(※2)がプロジェクトに参画。この課題に対し、解決策としてLINE公式アカウントの活用を提案しました。その理由について、有澤氏は次のように述べます。

 

※2:当時はキリンホールディングス株式会社 デジタルマーケティング部に所属

 

「理由は大きく二つあります。一つは、LINEのプラットフォーム上で注文から支払いまでの一貫したプロセスが実現できることです。多くのユーザーが日常的に利用しているLINEを活用することで、距離の近いフレンドリーなサービス設計を目指しました。もう一つは、来店後もお客さまとの継続的なコミュニケーションが可能なことです。店舗での注文時だけでなく、来店後のコミュニケーションまで一気通貫して行えるツールというと、LINE公式アカウント以外の選択肢はありませんでした」(有澤氏)

キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 有澤 涼一氏

キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 有澤 涼一氏

有澤氏の話を受け、若木氏も次のように話します。

 

「LINEはメインターゲットとなる若年層にも馴染みのあるコミュニケーションアプリであり、一日に何度も開くので、メッセージ開封の即時性にも期待できました。さらに、コミュニケーションツールとしてだけでなく、企業やブランドからのメッセージチャネルとしても認知されています。そのため、LINE公式アカウントを使うことで、情報の信頼性も高まると判断しました」(若木氏)

キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 若木 弦也氏

キリンホールディングス株式会社 経営企画部 DX戦略推進室 若木 弦也氏

クラフトマルシェのセルフオーダー&ペイの設計には、Okage株式会社が提供するモバイル&ペイシステム「Okage Go」を採用しています。本物の紙のメニューのようなレイアウトが設定でき、店舗の世界観を損なわない表現が可能になりました。実際に運用を開始してみると、開店前の店舗スタッフの研修工数が半分以下になり、人員が少なくても接客ができるようになるなど、店舗オペレーションのコストが大幅に削減できたそうです。

 

実際に来店したユーザーからも「会話の流れを遮ることなく、自分のペースで好きなメニューを注文できる」「LINEから注文ができるのは便利」という声が聞かれるなど、好評を博しています。

データを活用して個々のユーザー像を浮き彫りにし、最適なコミュニケーションを目指す

LINE公式アカウントの活用は、注文されたメニューや来店したユーザーのデータ蓄積にもつながりました。どのメニューがどの年齢層で人気なのか把握できたほか、来店後のサンクスメッセージや店舗からのお知らせなども、データを活用してユーザーごとの情報を元に出し分けて配信できるようになりました。

 

若木氏はデータを活用したメッセージ配信について、「メニューの注文から来店後のコミュニケーションまでLINE公式アカウントで完結しているため、自然な形で一貫した顧客体験を提供できている」と分析します。若木氏の言葉を受け、有澤氏も次のように語ります。

 

「従来のようにマスでユーザーを捉えるのではなく、データを基に一人ひとりへの理解を深めることで、最適な情報を最適なタイミングで届けることができます。ユーザーにとっても自分ゴト化して情報を受け取りやすく、継続的な関係構築が実現すると考えています」(有澤氏)

 

しかし、2020年に入ると新型コロナウイルスが猛威を奮い、店舗営業の自粛や営業時間の短縮が求められました。来店を促すメッセージも配信できないなど、厳しい状況が続きます。そんな状況下においても、LINE公式アカウントを通じて注文や支払いができる仕組みを先駆けて構築していたことは、店舗営業にとってアドバンテージになりました。

 

「オープン当時、現在のような状況を迎えるとは予想もしていませんでしたが、人と人の接触をなるべく避けなければいけない状況下で、セルフオーダー&ペイシステムの仕組みは感染対策としても役に立ちました。店舗側でも、ユーザーと店員の接触機会を減らしてソーシャルディスタンスを確保するなど、感染対策もしっかり行っています。さらに、ランチ営業やテイクアウトもスタートし、工夫しながらユーザーとの継続的な関係づくりに努めています」(渡辺氏)

 

当然ながら、この状況がいつまでも続くわけではありません。これまで蓄積したデータをダッシュボードで可視化し、新メニューづくりやユーザーにとって新しい顧客体験の価値創出につなげるなど、現時点でできる取り組みも進めています。今後、クラフトマルシェではテイクアウトなど新しいサービスと「セルフオーダー&ペイ」をうまく連携させるなど、店舗における顧客体験の利便性を向上させていく予定です。

 

(公開:2020年10月/取材・文:岩崎史絵、写真:川嶌 順)