「全店」「エリア」「店舗」で配信方法を使い分ける一風堂の集客施策
一風堂

株式会社 力の源カンパニー 企画販促担当 工藤 智氏
人気ラーメン店「一風堂」は、1985年に福岡で「博多 一風堂」として創業し、現在は国内のみならず14カ国・地域で店舗を構えています。国内においては店舗ごとにLINE公式アカウントを開設し、イベントやキャンペーン告知など、ユニークな施策を実施してきました。
同社のLINE公式アカウントの運用方法について、「一風堂」を運営する株式会社力の源カンパニーの工藤智氏(以下、工藤氏)に話を伺いました。
- 目的
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- 店舗の集客促進として有効なツールを活用したい
- 施策
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- 「一風堂」全店舗でLINE公式アカウント(旧LINE@)を導入
- 本部、エリア、店舗と3つの配信方法を使い分けながらユニークなキャンペーンやイベントを展開
- 効果
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- ある店舗のクーポン配信では1日約700人の来店者のうち、100人ほどがクーポンをきっかけに来店
- 友だち数に比例してイベント参加率やクーポン利用率が高く、客数UPにもつながった
当初は、19店舗で試験的導入。確かな手応えとともに全店導入へ
「第25回参議院議員通常選挙」の投開票が行われた2019年7月21日から11日間、「一風堂」では全国93店舗で「投票済証明書を提示すると、替玉もしくは玉子をサービスする」というキャンペーンを実施しました。
キャンペーンは2016年に始めた取り組みで、今回の開催で3回目。選挙期間中、「一風堂」のLINE公式アカウントに送られたメッセージには、「一票を大切にする人を、一風堂は大切にします」と記されたバナーとともに、次のようなメッセージが記載されました。
「皆さんが選挙に行ったり、選挙について話し合ったりする、ささやかなきっかけになれば嬉しく思います! 天気の悪い地域もあるようですので、気を付けてお出かけください」

同LINE公式アカウントを運営するのが、「一風堂」の経営母体である株式会社力の源カンパニーです。同社が店舗ごとにLINE公式アカウント(旧LINE@)を導入したのは、2015年4月のことでした。
「まずは19店舗で試験的に導入を開始しました。もともと、店舗では社員とアルバイトスタッフのコミュニケーションツールにLINEを活用していたこと、一般ユーザーの情報インフラとして利用率が高かったことから、導入を決断しました」

株式会社 力の源カンパニー 企画販促担当 工藤 智氏
工藤氏は、試験的導入から初期の1~2年間ほどを「友だちを増やすためのフェーズ」だったと振り返ります。初期は全店舗共通で同じ内容のメッセージを配信し、着実に友だち数を増やしていきました。友だち数の伸びに比例して導入を希望する店舗数も増加し、2018年3月時点で導入店舗数は42店舗、有効友だち数は合計14万人に。
「以降は本部主導の施策として、2018年4月に全店舗での導入を決断しました。現在、有効友だち数は合計30万人に達しています」
全店・エリア・店舗ごとに整理した活用方法
現在、「一風堂」のLINE公式アカウント活用方法は、おおよそ3つに大別されます。友だち追加時の特典として抽選くじを実施し、その後、友だちになったユーザーに新メニュー告知、全店で開催されるイベント情報などを配信する「全店配信」、当該エリアの新店オープン告知、地域性のある情報(例:一風堂が出店する地域のイベント)を配信する「エリア配信」は本部主導で行います。一方、各店舗が主体となって配信するのが「店舗配信」です。
店舗配信は各店舗の店長がアイデアを練り、配信を希望する場合はエリア担当者を通じて本部へ承認を募ります。例えば、「雨の日は替玉1玉無料」となるLINE限定クーポン「雨玉」は、神奈川県にある「たまプラーザ店」で実施されているアイデアでした。

LINE限定クーポンの「雨玉」。画像は駒沢公園店が配信したもの
「『雨玉』は特にクーポンとしての即効性が強い施策です。たまプラーザ店の有効友だち数は1万3,000〜1万4,000人ほどですが、ある雨の日には1日約700人の来店者のうち、100人ほどがこのクーポンを活用しています。そのほとんどが、クーポン配信をきっかけに来店しているため、本部としても想像していた以上の効果だと評価しています」

梅雨の時期はクーポンを毎日配信することもあるそうですが、「ブロックされることはほとんどない」と工藤氏。本部が全店・エリア・店舗それぞれの配信頻度に配慮しながら、「週に1度は情報配信ができるようにコントロールしているためです。また、「雨玉」クーポンのアイデアは、次のような副次的な効果も生みました。
「たまプラーザ店の場合、クーポンの反響からLINEの友だち数を増やすことを強く意識し、友だち募集のPOPやポスターの掲出場所やタイミングにも工夫を凝らすようになりました」
どんなにお得なクーポンでも、会計時より、注文前に存在を知ってすぐに使えた方がユーザーの活用意向は高まるはずです。たまプラーザ店でも、行列の待機場所に友だち追加に関する大きなポスターを掲出しました。本部としては、各店舗の有効友だち数などは積極的に全店へ共有し、他のエリア担当者や店長にも意識喚起を促しています。
友だち数に比例してリーチ数が上昇
全店・エリア・店舗からの配信によって来店促進を行う同社ですが、LINE上の各種施策について「配信した情報が登録ユーザーにダイレクトに届き、店舗へ足を運ぶ行動動機につながっている」と評価します。
2019年7月7日の限定イベントとして全店で行われた「七夕ペア割」では、夫婦もしくはカップルで来店すると「一風堂」の2大看板メニュー「赤丸新味」「白丸元味」のセットを特別価格1,000円(税別)で提供しました。
「7月2日にリリースを配信すると、ネットニュースやSNSといったメディアとの相乗効果により、多くの方にイベントのことを知っていただきました。さらにイベント当日、LINE公式アカウントから朝10時と夕方4時の2回、全店配信を行ったところ、配信をきっかけに大勢のお客様にご来店いただきました」
どの店舗でも、LINEの友だち数に比例してイベント参加率やクーポン利用率が高く、実際に店舗に足を運んでいただいた客数も顕著に上がっています。
「さらに付け加えると、全店配信では『一風堂』として社会に発信したいメッセージを送ることができ、エリア配信・店舗配信ではエリア担当者あるいは店舗が主体となってメッセージを配信できます。そんな柔軟性のある使い方ができるのが、『LINEならでは』と考えています」

同社の今後の目標は、店舗ごとの優良事例を他店にも共有・広げていくことで、「2020年3月末までに、合計50万人の有効友だち数を突破すること」。
「もちろん本部主導の全体配信も大事ですが、期待しているのは店舗配信です。店舗配信による働きかけが全体のリーチ数の半分ほどを占めているような状態をつくることで、お店に足を運んでくださるお客さまが増えると期待しています」
(公開:2019年9月/取材・文:安田博勇、写真:山﨑美津留)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです