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決め手はユーザーへの安心感と業務効率化、JR東日本がLINEを選んだ理由

東日本旅客鉄道株式会社

(写真右より)
東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 ICTビジネス推進グループリーダー 伊藤 健一氏
東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 MaaS事業推進部門 ICTビジネス推進グループ 篠田 恵氏
東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 課長 鈴木 大氏
東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 和田 裕仁氏

東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)は、1日の輸送人員数約1,790万人(2019年3月31日時点)、関東から甲信越、東北地方まで、広大な鉄道網を有して人々の生活を支えています。

 

同社では利用客向けの情報発信ツールとして、2018年よりLINE公式アカウント「JR東日本 Chat Bot」を運用しています。ユーザーの知りたい情報をチャット形式で自動応答する「JR東日本 Chat Bot」は、場所や時間を問わず、リアルタイムに情報が得られる安心感を与えてくれるサービスです。「JR東日本 Chat Bot」誕生の背景やLINEを活用した配信のメリットについて、同社の担当者に話を伺いました。

目的
  • 増え続ける問い合わせへの対応時間や人的コストを削減したい
  • 自社アプリだけではリーチできていなかったユーザー層とつながりたい
  • 時間や場所を問わず、リアルタイムの情報をユーザーへ届けたい
施策
  • LINE公式アカウントを開設し、問い合わせやニーズの高い情報を配信
  • チャット形式で問い合わせに自動応答
効果
  • 自社アプリでカバーできなかったユーザー層へのリーチが可能
  • 一方的な情報発信だけでなく、ユーザーと双方向のコミュニケーションが実現

 

自社アプリではリーチできなかったユーザーに情報を配信

JR東日本のLINE公式アカウント「JR東日本Chat Bot」が提供している主なサービスは、列車の運行状況の確認と、駅や車内での忘れ物のお問い合わせ、駅ごとのコインロッカーの所在地情報の提供などです。従来まで同様の情報は駅でアナウンスを聞くか、窓口などで駅員に確認、あるいは電話での問い合わせやインターネット検索といった方法でしか得られませんでした。

 

「JR東日本ではこれまでも、駅構内の各所にデジタルサイネージを配置して情報発信をしたり、電話でのお問い合わせによる応対の充実を図ったり、利用客の利便性向上のために努力を続けてきました。ただ、年々増え続けるお問い合わせの対応などに、スタッフの時間と労力を費やしていたのも事実です。そこで、LINEが多くの人に普及していることに加え、社内からの要望もあって開設したのが『JR東日本Chat Bot』でした」(伊藤氏)

東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 ICTビジネス推進グループリーダー 伊藤 健一氏

東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 ICTビジネス推進グループリーダー 伊藤 健一氏

2017年に「JR東日本Chat Bot」の試験運用を開始したJR東日本は、実証実験の効果を踏まえ、2018年から本格的な運用を開始。運行情報や「JR東日本Chat Bot」の名称の由来でもあるチャット形式でのQ&A応対だけでなく、ユーザーからの問い合わせニーズが高い「忘れ物情報」や「コインロッカーの所在地」に関する情報配信を実装しました。友だち数は100万人を超え、現在も増え続けています。

 

「試験運用の段階では大々的なプロモーションをしなかったこともあり、当初の友だち数は数千人規模でしたが、運用を続けてきた今では徐々に認知度が高まり、多くの方に利用いただいています」(篠田氏)

東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 MaaS事業推進部門 ICTビジネス推進グループ 篠田 恵氏

東日本旅客鉄道株式会社 技術イノベーション推進本部 MaaS事業推進部門 ICTビジネス推進グループ 篠田 恵氏

「JR東日本Chat Bot」の友だちは、女性ユーザーが多いといいます。同社ではLINE公式アカウントを導入する前から公式アプリ「JR東日本アプリ」を運用していますが、アプリの利用ユーザーは男性が中心でした。伊藤氏は、「JR東日本Chat Bot」によってアプリではカバーしきれなかった層のユーザーに情報を届けることができるようになったと話し、その要因を次のように分析しました。

 

「アプリでは『JR東日本Chat Bot』で提供している情報に加え、走行中の列車の現在地といった細かい位置情報も確認できます。しかし、こうしたディープな情報は一部ユーザーには好評なものの、ユーザーの中にはもっとライトな情報を求めていて、操作性も簡単なアプリを望む方も多くいました。そうしたニーズには、普段からユーザーにとって身近な存在であるLINEは親しみやすく、最適なツールだったと思います」(伊藤氏)

「JR東日本アプリ」で確認できる走行中の列車の現在地

運行情報も忘れ物の問い合わせもチャットで対応

「JR東日本Chat Bot」を開くと、まず目に入るのがリッチメニューに表示される「運行情報」「時刻表」「コインロッカー」「お忘れ物お問い合わせ」「質問する」「JR東日本アプリ(アプリへ遷移させるリンク)」といった6つのボタンです。中でも「運行情報」は最大4つまで「My路線」として登録でき、登録した路線の情報をリアルタイムで受け取ることができます。

運行情報のほかにも、忘れ物の問い合わせやコインロッカーの所在地などもすべてチャット形式で回答され、必要な情報を入力することで各駅の構内図などのリンク先が開いたり、登録した情報にマッチングした忘れ物の情報が案内されたりします。また、「質問する」をタップすると「JR東日本Chat Bot」独自のキャラクターである「こども駅員」が質問に回答します。質問への対応にはAIが実装され、JR東日本各駅の情報、列車の運行状況、きっぷに関する問い合わせなどが可能となっています。

 

「こども駅員はユーザーに『JR東日本Chat Bot』を身近に感じていただきたいという願いから生まれたキャラクターです。チャットではちょっとした雑談にも対応できるようにするなど親しみやすいような工夫もしているほか、お客さまから頂く多くのご質問を分析し、AIによる回答の精度向上に取り組んでいます」(和田氏)

東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 和田 裕仁氏

東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 和田 裕仁氏

実際に「JR東日本Chat Bot」を運用したことで得られたメリットについて、次のように話します。

 

「本格的な運用開始からまだ時間が経っていないこともあり、全体を把握するような数値データは分析中です。これまで電話でのお問い合わせだと時間帯や状況によっては電話がつながりにくい場合もあるのですが、LINEであれば時間や場所を問わずにお客さまのお好きな時に情報をお調べいただけますので、お客さまの利便性も向上できたのではないでしょうか」(鈴木氏)

東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 課長 鈴木 大氏

東日本旅客鉄道株式会社 鉄道事業本部 サービス品質改革部 課長 鈴木 大氏

「もうひとつ、LINEを活用してのメリットとして挙げられるのがテキストの視認性です。電話と違い、LINEの場合はお問い合わせ内容や登録情報が目に見える形で残ります。後で問い合わせ内容や回答で得た情報を確認するとき、非常に役立ちます」(伊藤氏)

 

さらに、LINE公式アカウントを開設したことで業務の効率化やユーザーとのコミュニケーションの深化といった課題が改善してきているといいます。

 

「当社ではLINE以外のSNSでもアカウントを運用していますが、これまでは当社からの一方通行の情報発信が中心でした。それがLINEを導入したことで、お客さまとの双方向のコミュニケーションが実現できるようになりました。LINEの魅力は、ユーザーと継続してコミュニケーションがとれるため、お客さまの身近な存在になれることだと感じています」(篠田氏)

最大のメリットは即座に情報が届けられる「安心感」

日本の鉄道の歴史そのものであるJR東日本の歩みの中で、実はLINEのような外部のプラットフォームを利用した前例はあまりなかったといいます。伊藤氏はその点でも「会社としてひとつ壁を乗り越えることができたのでは」と評価しています。そして、そこから得られたメリットの中でも、特に大きいものが「安心感」だと語ります。

「鉄道という公共交通機関は、自然災害時などの有事にはやむを得ず列車の遅延や運行停止といったご迷惑をかけてしまいます。安全を第一に考えると避けられない事態ではありますが、リアルタイムの情報や状況を即時にお客さまにお伝えすることができれば、不安感や負担が軽減されると考えています。『JR東日本Chat Bot』を通じて、より多くの方に便利さと同時に、さらなる安心感を提供できたらと思います」(伊藤氏)

 

今後は、現在行っている施策の改善と位置情報を活用した「LINE Beacon」機能などを利用したサービスを充実させ、より多くのユーザーに便利な情報を届けていく予定です。

 

「そのほかにも、『JR東日本Chat Bot』とJR東日本公式アプリを連動させたり、情報発信を行う際にも全員に一斉送信するのではなく、ターゲティングを活用してユーザー一人ひとりに合った情報を配信したりと、より良いサービスを提供するための工夫を重ねていきたいと考えています」(篠田氏)

 

(公開:2019年12月/取材・文:中野渡淳一、写真:山﨑美津留)