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LINE STAFF START

「直接連絡できる顧客」を増やすために。LINE STAFF STARTを導入したナノ・ユニバースの戦略

株式会社TSIホールディングス

2023.04.20

ナノ・ユニバース事業部 販売セクション プロバー店統括 木村亮介氏(右)
プラットフォーム本部 デジタルプラットフォーム部 OMOソリューション課 羽賀悠平氏(左)

「NANO universe」(以下、ナノ・ユニバース)は20〜30代の男女に支持されているアパレルブランドです。これまでナノ・ユニバースは購入者を対象に、アプリダウンロードからメンバーズ会員登録を促し、プッシュ通知やメルマガでキャンペーンなどの情報を届けてきました。一方で、店舗スタッフから「直接連絡ができる顧客」がほとんどいないという課題を抱えていました。

 

そこで、店舗スタッフが自身のLINE公式アカウントを通じて顧客とコミュニケーションができる「LINE STAFF START」を導入。連絡可能な顧客が順調に増え、クーポン配信から購買への転換率が大幅に高まるなど大きな成果を得ています。その施策と成果について、ナノ・ユニバースを運営する株式会社TSIホールディングスの木村亮介氏、羽賀悠平氏に聞きました。

目的
  • 店舗スタッフが直接、連絡できる顧客数を増やしたい
施策
  • LINE STAFF STARTを導入
  • 店舗スタッフのLINE公式アカウントを通じて友だちに情報発信
効果
  • 全店舗合計で一定のペースで友だち数が増加
  • メッセージ開封率が高く、クーポン利用率が大幅に向上
  • 接客の成果が可視化できるようになり、スタッフの多様な評価が可能になった

店舗スタッフが「直接連絡できる顧客数」を増やしたい

 ナノ・ユニバースはECにも注力している(ナノ・ユニバースのWebサイトから)

ナノ・ユニバースはスタイリッシュなアイテムを取り揃えるセレクトショップで、全国32店舗の正規店舗、アウトレット26店舗を展開(2023年4月現在)しています。

 

同ブランドは2022年4月、店舗スタッフ個人のLINE公式アカウントを通じ、ユーザーと直接コミュニケーションができる「LINE STAFF START」を試験導入しました。その目的について、ナノ・ユニバースを運営するTSIのナノ・ユニバース事業部 販売セクション プロパー店統括の木村亮介氏は次のように説明します。

 

「店舗ではKGI=売り上げです。それをKPIとして分解したとき、店舗スタッフが直接来店を促すことができる『営業連絡ができる顧客数』は何人いるのか、という課題が浮上しました。そのときにアプリのメンバーズ会員が顧客になり得ていないことに気づきました。メンバーズ会員にはプッシュ通知やメルマガを送っていますが、店舗スタッフが直接、声をかけることができるお客さまではありません。つまり、『連絡可能な顧客』ではなかったんです」

 ナノ・ユニバース事業部 販売セクション プロバー店統括 木村亮介氏

LINE STAFF STARTは、店舗スタッフ一人ひとりが専用のLINE公式アカウントを持ち、LINEを通じてオンライン接客ができます。企業・ブランドのLINE公式アカウントよりも関係性が近い店舗スタッフとLINE公式アカウントで友だちとしてつながることで、より深いコミュニケーションができるという特徴があります。

 ※お使いのバージョンによって画面のデザインが異なる場合がございます

「これまで、スタッフがプライベートで使用しているLINEで顧客と連絡していたケースもありますが、本社側でそれを把握・管理することはできません。LINE STAFF STARTであれば、スタッフのプライベートアカウントを守りつつお客さまも安心してLINEでつながれるので、深いコミュニケーションが取れると考えたんです」(木村氏)

テンプレートを作成しコミュニケーションを活発に

試験導入で顧客の来店に手応えがあったため、「スタッフが連絡可能な顧客数の拡大」という目標達成に向けて、2022年11月には正規店舗の全社員を対象にLINE STAFF STARTを本格導入しました。

 

本格導入を機にKPIとして設定したのは、店舗ごとの「LINE STAFF STARTの友だち数(=連絡可能な顧客数)」。店舗での接客時に友だち追加を促す施策として、友だち限定クーポンのほか、イメージに合う商品の提案、新商品の案内のために「友だち追加しませんか?」というトークスクリプトの例文集を作成しました。

 

「購入されたお客さまには『商品のメンテナンスの情報をお伝えします』など、お客さまに合わせた提案をタイプ別に一覧化しています。例文には、友だち追加で成果を上げているスタッフが実践している内容も入っていて、成功事例を各店舗で共有することで連絡可能なお客さまの拡大に努めています」(木村氏)

 店舗スタッフがメッセージ配信で来店を促進

同時に、友だちと効果的なコミュニケーションを取るための体制も整えました。同社でスタッフのデジタル活用サポートをメイン業務としているプラットフォーム本部 デジタルプラットフォーム部 OMOソリューション課の羽賀悠平氏は「LINE STAFF STARTを通じたコミュニケーションは、友だち限定クーポンなど本部を通じて一斉配信するメッセージと、スタッフ個人からのメッセージの2つの軸があります」と話し、スタッフが活用するためのサポートについて次のように説明します。

 プラットフォーム本部 デジタルプラットフォーム部 OMOソリューション課 羽賀悠平氏

「クーポンなどは全社的に同じメッセージを配信しますが、スタッフ個人から『こういう商品を紹介したいので、私の出勤日に来店しませんか?』というメッセージの場合、どのような文章がいいかわからないというスタッフもいます。そうしたスタッフでもメッセージを送りやすくするためにテンプレートを作成し、アレンジして使ってもらうようにしています」(羽賀氏)

連絡可能な顧客数が増加、クーポン利用率も高くスタッフの成果も可視化

同ブランドはLINE STAFF STARTの本格導入から数カ月ながら、3つの成果が得られたといいます。

1つ目は「連絡可能な顧客数」が拡大していること。2023年3月現在、LINE STAFF STARTの友だち数は、全店舗で順調に増加しています。一定のペースで友だちを増やせているため、数カ月後にはおよそ○○人、そこからの売り上げが○○円というように、将来のLINE STAFF STARTを介した売り上げ予測が立てやすくなったといいます。

 

2つ目は、購買への転換率の高さです。クーポンをLINE STAFF STARTの友だちとアプリのメンバーズ会員に配信した際、LINE STAFF STARTの友だちの方が購買する割合が圧倒的に高いといいます。

 

転換率の高さについて木村氏は「たとえメンバーズ会員の上位顧客にクーポンを配信したとしても、LINE STAFF START経由の高い転換率にはとても及びません。アプリのプッシュ通知やメルマガより、日常的に利用されているLINEを通じて関係性が深い店舗スタッフが送るメッセージの開封率が高いことが一因」と分析します。

 

3つ目は、店舗スタッフの接客の成果を可視化できるようになった点です。LINE STAFF STARTではスタッフごとの売り上げを可視化できるため、これまで個人的にSNSなどでやり取りしていて見えにくかった接客の成果が評価できるようになりました。

 

「売り上げの報告がメインだった店長会議で店舗スタッフの名前が出るようになりました。『○○店の○○さん、友だち増えてるね』と、LINE STAFF STARTをうまく活用しているスタッフが誰なのか把握できるようになり、優れたスタッフに関する認識が変わりました」(木村氏)

LINE STAFF STARTは「購入のきっかけ」

 木村亮介氏

近年、店舗とオンラインの融合が急速に進みつつあります。その中でLINE STAFF STARTは単に来店を促すだけでなく、「お客さまの購買のきっかけになる」と木村氏は話します。

 

「来店を促す目的で導入したLINE STAFF STARTですが、お客さまにとって利便性が高いほうを優先すべきで、オンラインでの購入でもいいと考えています。LINE STAFF STARTはスタッフとのコミュニケーションを通じて購入のきっかけになればいい。リアルの店舗とオンラインがお客さまを取り合うのではなく、『どちらか便利なほうを使ってください』というきっかけとして、LINE STAFF STARTはナノ・ユニバースの戦略と相性がいいと感じています」

(公開:2023年4月、取材・文/岩崎史絵、写真/慎芝賢)
 
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
※本記事内の実績は取材先調べによる数値です