LINEで高級車が売れる!? MINIにみる「顧客と濃くつながる」LINE公式アカウント活用術
ビー・エム・ダブリュー株式会社
ビー・エム・ダブリュー株式会社 MINIディビジョン デジタルマーケティング 大立目 尚子氏
ビー・エム・ダブリュー株式会社 MINIディビジョン デジタルマーケティング 中川 裕美氏
LINE公式アカウントは、ブランドの体験をLINEのトーク画面というユーザーのプライベートな領域に届けることができるサービスです。平均友だち数は約550万人(ブロックユーザー含む)。友だち登録したユーザーに向けて、画像とテキストをビジュアルにまとめたリッチメッセージやビデオメッセージなど、豊富な機能でコミュニケーションを図ることができます。そのため、サイト訪問やキャンペーン応募などのユーザーのアクション誘引に高い効果が見込めるほか、エンゲージメント形成にもパワーを発揮できます。
さらに、顧客が保有する消費者データやツールと連携できるAPIを活用することで、個別・セグメント配信や双方向コミュニケーション、チャットBotによる自動応答など、さらに幅広い活用が可能です。そんなLINE公式アカウントの活用法について、ビー・エム・ダブリュー株式会社の大立目尚子(以下、大立目氏)と中川裕美氏(以下、中川氏)に話を伺いました。
- 目的
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- これまでのプロモーションでリーチできていなかった層にアピールしたい
- 実売につながるような関係性の深いプロモーション施策を展開したい
- 施策
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- LINE公式アカウントをプロモーションだけではなく、ユーザーとの対話の場として活用
- トーク画面でのアンケートで30種類以上のクリスマスカードをプレゼントするキャンペーンを実施
- チャットBotを活用して試乗やカタログ請求の申込みがLINE上で行えるサービスを展開
- 効果
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- 購買層に近いユーザーにしっかりアプローチできたことで、集客だけでなく全てのコンバージョン率で高い数値を記録
- LINE経由でディーラーに来場するユーザーが増加
他のSNSではリーチできなかった層へのアプローチが実現
世界中で高い人気を誇る「MINI」。このブランドを展開するMINI Japanが、LINE公式アカウントを開設したのは2016年3月のこと。同社がLINEの活用を決めたのは、老若男女幅広いユーザーを抱えている点に着目したからだといいます。
「これまでも各SNSでプロモーションは行っていましたが、それだけではリーチできない層にアピールすることが一番の目的でした。それに最近では、消費者の多くがLINEで企業の情報を得ることに慣れてきており、これまでにない形でコミュニケーションを図れるのではないかという期待がありました」(大立目氏)

普段スマホで利用するSNSは「LINEのみ」が38.3%にのぼる。調査機関:マクロミル社・インターネット調査 (2017年7月実施/全国15~69歳のスマートフォンユーザーを対象 サンプル数18,096)
もともと新しいことに挑戦するのが大好きな社風だというMINI。実際、LINE公式アカウントの取得は、海外自動車メーカーとしてはこれが初のケースでしたが、そこには予想以上の成果が待っていました。
「イメージしていたよりも、購買層に近いユーザーにしっかりアプローチできた実感があります。LINEのユーザー層は30~50代がボリュームゾーンと聞いていますが、これは私たちが最も訴求したい年代層なんです。ここが他のSNSでは得られないメリットでした」(中川氏)

調査機関:マクロミル社・インターネット調査 (2019年7月実施/全国15~69歳のスマートフォンユーザーを対象 サンプル数20,000) そのサービスも非利用:10.9%
実際、MINIに関する何らかの情報を配信すると、ほんの数分のうちに他媒体の数十倍に匹敵する登録があるなど、目覚ましい反響がありました。また、2016年にLINE公式アカウントから店頭送客を行うキャンペーンを開催した際には、当初の想定を遥かに超える集客が実現しました。
「集客だけでなく、全てのコンバージョン率が非常に高いので、アクティブなユーザーが集まっていると感じます」(大立目氏)

トーク画面下部に大きく開くリッチメニューは、ユーザーにとって強力なナビゲーションに。MINIのアカウントではこの部分のデザインにも工夫が凝らされている。
ユーザーに「ありがとう」と言われる血の通ったプロモーション
アドテクノロジー全盛の昨今において、LINEが持つ特有のメリットは何なのか。それは、「ユーザーと同じ視点でコミュニケーションできること」だと中川氏は語ります。
「テレビではどうしても一方的な発信になってしまいますし、他のSNSではリーチできる層が限られているのが実情。その点、LINE公式アカウントの機能は、多くの層に日頃のトーク感覚で使っていただけますし、投稿に対して自動応答もできるため、他のメディアではできない1対1の深いエンゲージメントが形成できたと感じています」(中川氏)
MINIでは、自動応答機能を利用して、ユーザーがキーワードをトーク画面に入力するとスマホ画面用の壁紙を贈ったり、クイズに答えるとプレゼント抽選に応募したりできるといった企画をいくつか展開しています。たとえば、昨年12月に実施した、クリスマスカードのプレゼント企画もその一つです。

2016年12月に実施されたMINIのクリスマスカード企画。ユーザーのリアクションに応じてさまざまなカードが送信される。
「トーク画面でアンケートを送り、回答に応じて30種類以上のクリスマスカードをMINIからユーザーに贈るというキャンペーンです。隠れキーワードも用意し、それを入力したユーザーには特別なカードやメッセージが出てくるというサプライズも用意しました。SNSなどを見ていると、この企画についてユーザー同士で盛り上がっているケースも多く、反響は上々だったと思います」(中川氏)
ここでしか手に入らないカードは、MINIファンにとってたまらないクリスマスプレゼントとなったに違いありません。こうした壁紙プレゼント企画を実施した際には、受信後にトーク画面へ「ありがとう」とお礼を返信してくれるユーザーもいたそうです。
「お礼を言ってくれるユーザーがいたことは驚きでした。これはMINIというモデルの柔らかなイメージと、LINEの気楽さがマッチしたからこその現象だと考えています。通常のブランディング施策では、こうした気さくなコミュニケーションは生まれません。LINE 公式アカウントだからこそ作れるファンとの繋がりがあると感じます」(大立目氏)
こうしたコミュニケーションのメリットは、マスプロモーションより小規模ではあっても、熱心で能動的なMINIファンと通じているという実感が得られる点です。
LINEで友だちと会話するように、気軽な試乗予約を実現
そんな流れもあって、MINIでは2017年からチャットBotの領域に注力し、ユーザーとのさらなる深いコミュニケーションを試みています。例えば、試乗やカタログ請求の申し込みも、チャットBotの活用によって自ずと活性化します。ユーザーは希望する項目をLINEのトーク画面上に入力し、チャットBotと会話することにより、試乗車が検索でき、カタログ請求を行うことができます。LINEで友だちと会話するような気軽さで、ユーザーがMINIにアプローチすることができる機能を通じてディーラーを身近に感じてもらうことで、LINE経由でディーラーに来場するユーザーが増え、それが少なくない実売につながっている実績もできました。

MINIの試乗車検索。ユーザーはLINE上で希望の項目を選んでいくだけで、近くのディーラーや試乗可能なモデルを検索し、試乗予約に進むことができる。
ユーザーの生活に入り込む「唯一無二のメディア」
この他、LINEプロモーションスタンプの配信も好評で、これまでMINIに接触の機会を持たなかった層も活発に利用したことから、思いがけない拡散効果が生まれました。

MINIでは「ダイレクトスタンプ」メニューを実施。これはLINEアプリ内の「スタンプショップ」にダウンロードページへの誘導がなく、広告主のLINE公式アカウントから直接、誘導をかけるプランとなる。
「こちらの仕掛けた企画によって、ユーザー同士の会話に花が咲くのは、やはり嬉しいことです。お客さまの生活にいかに入り込んで行くかを考えた時に、これほど有効なツールは今、他にないのではないでしょうか。マスプロモーションとはまったく異なる、ユーザーとの交流や対話が実現できる場所として、LINEは唯一無二のメディアだと感じています」(大立目氏)
LINE公式アカウントには他にも、特殊な加工を施したメッセージや、ユーザーに対してアンケート収集を行うリサーチページなど、多彩な機能が実装されています。LINE公式アカウントの強みのひとつは、各企業のニーズや課題によって、これらの機能をそれぞれに活用できる展開の多様性。”正しい使い方”はひとつではなく、日々、それぞれの企業で独自の活用法が生まれています。
(公開:2018年2月/取材・文:友清哲)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
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