CSの未来は「LINE公式アカウント」で実現。オルビスの人肌感あるチャットサポート
オルビス株式会社

オルビス株式会社 CRM・顧客満足推進部 太刀川侑希氏(写真左)
りらいあコミュニケーションズ株式会社 デジタル・マーケティング本部 大栁文乃氏(写真右)
法人向けカスタマーサポートサービス「LINE公式アカウント」の機能の一つである「LINEチャットPlus」。LINEの法人向けアカウントに届いたユーザーからの問い合わせに対し、AIが自動応答でチャットサポートするツールで、多くの企業で導入が進んでいます。
今回は導入企業の一つであるオルビス株式会社(以下、オルビス)の太刀川侑希氏(以下、太刀川氏)とパートナー企業である、りらいあコミュニケーションズ株式会社(以下、りらいあ)の大栁文乃氏(以下、大栁氏)に話を伺いました。
- 目的
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- 販売チャネルの移り変わりによって、希薄化した顧客との関係性を取り戻したい
- 減少した顧客から寄せられる声を取り戻し、ニーズを汲み取りたい
- 施策
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- Webで導入していたチャットボットのエンジン移行に合わせ、LINEチャットPlusを導入
- 効果
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- セッション数は事前想定の4倍
- キャラクターとAIの組み合わせで、人間味のある顧客対応が実現
- 顧客とクローズドな関係を築くことで、サイレントマジョリティーの声が徐々に聞こえてくるようになった
創業当初から顧客との関係性を重視しているオルビス
1987年、カタログによる通信販売から事業を開始したオルビス。化粧品、健康食品、ボディウェアの3分野で数多くの商品を取扱い、若年層からシニア層に至るまで、幅広い層の女性から支持を得ている化粧品メーカーです。2000年には直営店舗である「オルビス・ザ・ショップ」の1号店をオープンし、現在は通信販売と対面販売を展開しています。創業当初から顧客との関係性が重視されており、電話、メール、郵便などで寄せられる顧客からの声は、オルビスの企業活動の源となっています。
EC市場の拡大に伴い、オルビスでは現在ECの受注比率が約7割を超えているそうです。ECが販売チャネルの主軸になる中で、顧客とのコミュニケーションに課題を感じるようになったと、太刀川氏は明かします。
「オルビスは、電話対応を中心とした人肌感のあるコミュニケーションが強みです。ところが、ECは人手を介さずに購買できるため、その強みを生かす機会が減ってしまい、お客さまとの関係性が希薄化しているように感じました。従来、電話での注文の際にオペレーターがお客さまのニーズをうまく聞き出して、それをデータベース化することでお客さまの声を形にしていたのですが、ECだとお客さまの声が溜まりづらく、ニーズの把握が難しくなってきています。そもそも、Webで購買が完結してしまうので、企業と積極的にコンタクトを取って来られる方が減少しているようにも感じています。そのため、お客さまとコミュニケーションを取ってニーズを引き出すのはもちろんのこと、ただ買っていただくのではなく、オルビスに愛着を持ってもらい、エンゲージメントを高めることができないかと考えました」(太刀川氏)

導入後、お客さまとの交流をつないだ「うるにゃん」
もともと、オルビスは2013年4月からLINE公式アカウントを運用していました。そのLINE公式アカウントにLINEチャットPlusを連携して、2017年12月からLINEでのチャットサポートが始まりました。
その際に、LINE公式アカウントの友だちとの交流を生み出すきっかけとして活用されたのが、オルビスの人気キャラクター「うるにゃん」。サービスに関するFAQを中心に、うるにゃんが自動応答で問合せ対応をしてくれます。加えて、ワンタップでうるにゃんに質問ができる機能をリッチメニューへ設置。リッチメニューは、トークルームに固定で表示させることができる強力なナビゲーションなので、積極的に問合せをしてもらうために有効だと考え、設置されました。

うるにゃんの会話は、りらいあの「バーチャルエージェント®」がベースとなっており、会話が機械的にならないよう、さまざまな工夫が施されています。
「チャットサポートにおいては、やはりうるにゃんの会話力が肝になってきます。やり取りの中で、うるにゃんが質問に答えられず『わからない』で返答すると会話が続かなくなってしまうので、自然に会話が続くようなナレッジを用意しました」(太刀川氏)
「うるにゃんの返答は、お客さまからの問い合わせが短すぎる単語や長い文章、曖昧な表現での質問であっても、登録したシナリオやFAQから、ある程度、入力された問合せに近い内容の候補を出せるような仕組みを取っています。日々の運用の中で、できるだけどんな入力の内容でも候補を提示したり、一問一答でしっかりと回答ができるように、登録キーワードのバリエーションや言い回しのバリエーションを増やして学習させるなどのチューニングを定期的にログを分析して、実施しています。コールセンターでのオペレーター経験者が専門チームに多数在籍しており、お客さま対応のノウハウを念頭において回答文を作り上げているので、人間の対応により近いシナリオ設計や会話設計が実現できています」(大栁氏)
想定以上の手応えが「声」となって現れる
今回の導入にあたり、KPIをセッション数と解決率に設定し、数字を追っていたそうです。その結果、想定していたセッション数の約4倍もの数値が得られたといいます。導入効果を検証する中で分かったLINEならではの特徴を、太刀川氏は次のように明かします。
「問い合わせの内容としては、うるにゃん絡みのものが一定数あります。『LINEスタンプが欲しい』とか『キャンペーンはいつ』とか。その一方で、LINE公式アカウントではプロモーションの発信が盛んなので、発信後、その商品に関する問合せを多くいただく点も特徴です。また、ユーザー層はニキビに悩む若い方からエイジングに悩む方まで幅広く、真剣に相談してくださるお客さまもいます。電話では躊躇してしまう問い合わせも、LINEであれば手軽に問合せができるという方も一定数いらっしゃり、電話では聞こえてこなかった声、サイレントマジョリティーの存在も少しずつ見えてきているように感じます」(太刀川氏)
さらに、太刀川氏は続けます。
「Webの方でもうるにゃんのチャットボットを使っていて、お客さまから『ありがとう』などと褒めていただくことが多いのですが、LINEになってより増えたように感じます。会話の終わりには必ずと言っていいほど『ありがとう』と言われます」(太刀川氏)
オルビスの強みである「人肌感のあるコミュニケーション」が、うるにゃんとの自然な会話を通してEC上でも実現できているようです。
より「顧客に寄り添える」存在を目指して…
太刀川氏によると、今後注力していきたい取り組みとして、次の三つがあるといいます。
チューニング
有人エスカレーション
ログ活用

一つ目の「チューニング」については、うるにゃんとの会話がセッション数の増加や利用拡大のきっかけとなっている側面があるため、本来のチューニングをメインで回すことはもちろん、うるにゃん“らしさ”を発揮したチューニングにも力を入れていきたいそうです。
「うるにゃんだからこそできる会話というか、バリエーションに富んだ会話が楽しめるよう、会話の遊びを増やしていくことに挑戦したいです。うるにゃんは、親みやすく話しやすいムードづくりを狙っていますが、可愛いキャラクターだけで終わってしまうと意味がないので、賢く可愛いキャラクターに育てていきたいと考えています」
次に、二つ目の「有人エスカレーション」に関しては、エンゲージメントの強化策の一つとして検討されているようです。LINE公式アカウントとLINEチャットPlusを連携させたことによって、プロモーションとサポートを同時にLINE公式アカウント上で行えるようになったため、うるにゃんが回答できない質問をエスカレーションして有人対応することで、エンゲージメントの強化が図れると見込んでいるそうです。
最後に太刀川氏は、「ログ活用」についても意気込みます。
「LINEは手軽に話しかけやすい反面で、いたずらのような問合せも多くあります。そのため、全てのログが有効ではありませんが、これまで企業と積極的にコンタクトを取らなかった人達にアプローチできているので、そのログをしっかり分析して、今後のアクションにつなげていきたいと考えています」(太刀川氏)
(公開:2018年9月)
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