クリック率はメルマガの5.1倍!若年層を獲得したSHIROHATOのLINE公式アカウント活用戦略とは
株式会社白鳩

株式会社白鳩 WEB事業部 CRM課 課長 森谷真夕子氏
1965年創業の株式会社白鳩(以下、白鳩)は、自社ブランド商品のほか、国内外のメーカーから仕入れたインナーウエア商品のインターネット販売及び直営店舗「SHIROHATO」を運営しています。
2015年5月には自社ECサイトのLINE公式アカウントを、2015年12月には楽天市場店、2016年11月にはPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントを開設して以降、デジタルマーケティング戦略の要として活用してきました。その背景や効果的なメッセージ配信方法、具体的な成果などについて、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントを例に、同社WEB事業部 CRM課 課長の森谷真夕子氏に話を聞きました。
- 目的
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- 開封率が低下していたメルマガに代わる新たな販促ツールを導入したい
- 施策
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- 開封率や即時性の高さに期待してLINE公式アカウントを導入
- ブロック率を下げるため、友だち追加の導線に「友だち特典紹介ページ」を設定
- 自社ECサイトやECモールの特徴に合わせ、アカウントごとにメッセージ配信のタイミングや訴求内容を使い分け
- 効果
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- メルマガと比較してLINE公式アカウントのメッセージ配信の開封率は3.7倍、クリック率は5.1倍を記録
- メルマガでリーチができていなかった若年層の獲得に成功
- 2022年4~7月におけるLINE公式アカウント経由の一人当たりの合計購入金額は、同社PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)全体と比較して1.6倍を記録
- 同社PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)の売り上げのうち約15%をLINE公式アカウントが占める(2022年7月時点)
メルマガの開封率の低さを懸念し、LINE公式アカウントを導入
京都府に本社を置く白鳩は、インナーウエア商品のインターネット販売及び直営店舗「SHIROHATO」を運営し、ナショナルブランドからプライベートブランドまで、国内外175ブランド・約1万アイテムを販売しています。
同社は、2015年に自社ECサイト「SHIROHATO」のLINE公式アカウントを開設しました。さらに、国内ECモール10店舗のうち、同社商品の売り上げ上位を占める「楽天市場店」と「PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)」の2店舗のLINE公式アカウントも運用しています。LINEの活用を含めたデジタルマーケティング戦略の全体像について、森谷氏は次のように説明します。
「目的別に複数のデジタルツールを使い分けています。Instagramは『認知』、Twitterは『拡散』、そしてLINEは『販促』を担うツールです。認知の拡大から段階的にユーザーの“ファン度”を高め、最終的に自社アプリで『囲い込む』ことが狙いです。中でも、LINE公式アカウントは単なる販促ツールとしてだけでなく、新規からリピーター、ロイヤルユーザーへの育成を図るためのコミュニケーションツールとして、非常に重要な役割を果たしています」

白鳩のマーケティング戦略
以前は、LINE公式アカウントの役割をメルマガが担っていたそうですが、「年々、メルマガの開封率が低下してきたため、LINE公式アカウントに切り替える方針にした」と森谷氏は続けます。
「やはり、国内の月間利用者数9,300万人(2022年9月末時点)というLINEの普及率の高さが決め手になりました。LINE公式アカウントはプッシュ型ツールのため、メルマガよりも開封率の高さに期待できるだけでなく、即時性に優れている点も魅力です。例えば、モールのイベント開始に合わせてメッセージを配信すれば、購買の後押しができます。実売につながる施策を任意のタイミングで行えるLINE公式アカウントは、特にECの販促で力を発揮するツールだと思います」

株式会社白鳩 WEB事業部 CRM課 課長 森谷真夕子氏
自社ECサイトやECモールの特徴に合わせ、アカウントごとに配信内容を変更
白鳩では、LINE公式アカウント運用のKPIの一つに「友だち数」を設定しています。とくに2021年秋以降、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)の友だち集めに力を入れ、2021年11月19日~12月2日にかけて、従量課金型のCPDスタンプを配布。2週間で5万人の友だちを集めました。
また、普段からメルマガやSNS、LINE VOOMの投稿による誘導のほか、サイト上に案内バナーを掲載するなどして友だち追加へ誘導。友だち追加のページに遷移する前に「特典紹介ページ」を挟むことで、友だち追加をすればどのような情報が届くのか、どんなメリットがあるのか、友だちになる特典を分かりやすく伝えています。

友だち特典紹介ページを挟む
「PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントでは、購入を促すために友だち追加時に配信される『あいさつメッセージ』でクーポンを配布しています。LINE公式アカウント経由の売り上げのうち、57%が友だち追加時に配信される『あいさつメッセージ』からの遷移です。このデータから、友だち集めと売り上げアップにクーポン配布がとても有効なことが分かります。
しかし、その一方で、“クーポンを獲得して即ブロック”というユーザーが一定数いることも事実です。せっかく友だちになっていただいても、ブロックされれば一切コミュニケーションが取れなくなってしまいます。どんな情報が受け取れるのか、どんなメリットがあるのかをきちんと提示し、ブロック率を最小限にすることがLINE公式アカウントの運用では大切だと思います。そのため、あいさつメッセージでも特典紹介を提示しています」

あいさつメッセージが購入に寄与
さまざまな施策を実施した結果、2021年10月に約5,000人だったPayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)のLINE公式アカウントの友だち数は、半年ほどで20倍の10万人にまで増加しました。友だち数が増加すれば、メッセージの配信効果はさらに高まります。
現在は一斉配信だけでなく、オーディエンス機能を使ったセグメント配信も行っています。例えば、過去に配信したメッセージを開封したユーザーに限定して配信する「インプレッションリターゲティング」、配信内容をクリックしたユーザーをターゲットにした「クリックリターゲティング」、友だち追加経路別にメッセージを配信できる「追加経路オーディエンス」をよく活用しているそうです。こうしたセグメント配信によって「限られた予算で最大限の成果をあげることができている」と森谷氏は評価します。

メッセージ配信のポイント
白鳩では、保有している3つのLINE公式アカウントを、それぞれのサイトの特徴やユーザー層に合わせ、配信内容やタイミングを使い分けています。
「ECモール用のLINE公式アカウントでは、基本的に2ステップでメッセージ配信を行っています。モールの利用者はお買い物上手な方が多く、事前にカートに商品を追加しておいて、割引率やポイント還元率がアップするターゲットデーに購入するという方が大部分を占めます。その傾向を踏まえて、LINE公式アカウントでの訴求内容はセールやクーポンなどのお得な情報を配信するようにしています。タイミングとしては、1回目のメッセージ配信はターゲットデーの数日前に行います。セールやクーポンなどのお得な情報をお知らせして、まずカートに商品を入れてもらう。そして、ターゲットデーの当日、最も利用者が多くなる21時頃に2回目の配信を行い、カート内の商品購入を後押ししています」

PayPayモールの攻略
一方、自社ECサイトのLINE公式アカウントでは、よりユーザーの満足度を重視したメッセージ配信を行っています。
「当社のECサイトをご利用いただくお客さまは下着好きな方が多いため、ブランド情報や機能性など、新商品の詳細情報を中心にメッセージ配信を行っています。競合他社がひしめく中で、SHIROHATOから買っていただくためには、ユーザーが求める情報を、ピンポイントで提供することが重要です。セグメントをより強化するなどして、今後もユーザー満足度を高められるメッセージ配信を行っていきたいと思います」

白鳩の保有するLINE公式アカウントの使い分け
メルマガでリーチできなかった若年層の獲得に成功
配信に用いるクリエイティブにも、工夫が見受けられます。
「テキスト要素は必要最低限。写真に『25%off』『半額』などと添えて、端的にユーザーメリットを伝えるようにしています。カードタイプメッセージを使うことが多く、特に人気の商品を4~5個ほど横並びで掲載して、最後のカードに『もっと見る』ボタンを設けてサイトに遷移してもらうという仕組みです」

さらに、リッチメニューの最適化にも力を入れており、「重要な情報は右上に掲載する」という森谷氏。その理由をこう明かします。
「自社コンテンツでの検証の結果、右上のボタンがほかと比べて約2倍クリックされていることが分かりました。これは、多くユーザーが右手の親指でスマートフォンを操作するためだと思われます。そのため、クーポンやセールなど、一番クリックしてもらいたい情報は右上に掲載するようにしています。
また、リッチメニューはデフォルトメニューと販促メニューの2つを準備しています。販促メニューではクーポンやセールのお知らせを掲載し、期間が終了したらデフォルトメニューに切り替わるように事前に掲載期間を設定しています。リッチメニューはクリック率が高いうえに、メッセージ通数を消費せずに情報を伝えられるのが魅力のため、常にリッチメニューを目立たせるようにしています」

リッチメニューのポイント
こうした数々の工夫が功を奏し、メルマガと比較してLINE公式アカウントのメッセージ配信の開封率は3.7倍、クリック率は5.1倍と、当初の期待以上の成果が出ています。
また、2022年4~7月におけるLINE公式アカウント経由の一人当たりの合計購入金額は、PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)全体と比較して1.6倍に上ります。さらに、メルマガ経由の購入者のボリュームゾーンが50代であるのに対し、LINE公式アカウント経由の購入者は40代がボリュームゾーンで、20~30代のユーザーも存在するなど、メルマガでリーチができていなかった若年層の獲得にも成功しています。

LINE公式アカウントの購入者傾向
LINE公式アカウントを活用した取り組みの結果、2022年7月時点でSHIROHATO PayPayモール店(現:Yahoo!ショッピング店)の売り上げのうち約15%がLINE公式アカウントを経由しています。今後の活用の展望について、森谷氏は次のように語ります。
「今後はLINE VOOMも活用して新規のお客さまとの接点を強化し、さらに友だち数を増やしていきたいですね。また、既存のお客さま向けにはより詳細なセグメント配信を実施し、LINE公式アカウント経由の売り上げのさらなる拡大を目指していきます。そして、売り上げアップを実現しながら、新しい顧客体験もLINEで提供できたらと考えています」
(公開:2022年11月、取材・文/相澤良晃、撮影/川嶌 順)
※本記事内の数値や画像、役職などの情報はすべて取材時点のものです
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