サントリービール株式会社(以下、サントリービール)は、主力商品である「ザ・プレミアム・モルツ(以下、プレモル)」をより多くのユーザーに購入してもらうため、2021年3月から2022年1月までLINEミニアプリを利用したレシート応募キャンペーンを実施しました。同社プレミアム戦略部の宮元尚哉氏(以下、宮元氏)に、LINEミニアプリをキャンペーンに導入した経緯、併用しているLINE公式アカウントの運用、LINEのサービス活用で得られた成果について話を聞きました。
- 目的
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- 日常に浸透したLINEを活用して、双方向のコミュニケーションが取れるキャンペーンを実施したい
- 圧倒的なユーザー数を擁するLINEを応募の窓口にすることで、より多くのユーザーのキャンペーン参加を促したい
- 施策
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- 「プレモル」のレシート応募キャンペーンのプラットフォームにLINEミニアプリを導入
- 応募後、すぐにインセンティブを受け取れる仕組みと、“ゲーム性”のあるユーザーランク制を取り入れた
- LINEミニアプリの初回利用時、自社のLINE公式アカウントをスムーズに友だち追加できるように設定。キャンペーンの告知メッセージを定期的に配信し、継続率を高める
- 効果
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- アンケート結果によると、応募者の約8割がこれまでプレモルを購入したことのない新規購買ユーザーだった
- 全体の4割以上のユーザーが2回以上キャンペーンに参加するなど、継続率が高いキャンペーンとなった
即座にインセンティブを受け取れるレシート応募キャンペーンを実施
サントリービールは商品ブランドの認知拡大と販売促進を目的として、これまでさまざまなキャンペーンを実施してきました。代表的なものが、対象商品に貼られたシールを集めて応募する「ポイントプログラム」キャンペーンです。
ハガキにシールを貼って送付するスタイルから、近年はシールに印刷されたシリアル番号をWebサイトで入力する方法が中心になっていました。しかし、いずれも「コミュニケーションが一方的だった」と宮元氏は振り返ります。
「本キャンペーンを企画していた当時、コロナ禍による自粛生活にメリハリをつけるため、『少し贅沢して良いビールを飲みたい』という消費者ニーズの高まりを感じていました。そうした中で、日常に浸透したLINEを活用すれば双方向のコミュニケーションが取れると考えました」
プレモルのキャンペーンでは、ユーザーに対象商品の購入レシートをスマホで撮影し、LINEミニアプリ上で送信してもらいます。送信されたレシート画像はOCR(光学文字認識)で即座に自動判定され、プレモルの商品名が入っているとLINE PayやLINEポイントがすぐに付与される仕組みです。

「今回のキャンペーンにLINEミニアプリを導入したのは、大きく3つの理由がありました。1つ目は、応募直後にインセンティブを受け取れるため、購買につながりやすいこと。2つ目は、キャンペーン期間中にプッシュ通知をすることで、継続率を高められること。3つ目は、キャンペーンをきっかけにつながったお客さまとLINEでコミュニケーションが取れることです。
キャンペーンのプラットフォームをWebサイトにした場合、実現できないメリットです。また、圧倒的なユーザー数を誇るLINEを応募の窓口にすることで、より多くのお客さまの参加を促し、プレモル購入が習慣化されると期待していました」
同社は事前のリサーチで「週末にご褒美としてプレモルを購入するユーザーが多い」ことを把握しており、キャンペーンの参加制限は1ユーザーにつき週1回に設定しました。1回参加するごとに20円相当分のポイントのほか「ご褒美スタンプ」が1つ貯まり、スタンプを4つ貯めると、LINEポイントが追加でもらえる「ご褒美チャンス」に挑戦できます。

「長期間にわたりキャンペーンを実施するには、お客さまに楽しんでもらうための仕掛けが必要だと考え、“ゲーム性”のあるユーザーランクアップの制度を導入しました。こうした機能設計における自由度の高さも、LINEミニアプリの魅力の1つです」
キャンペーンに参加したユーザーの4割以上が2回目も応募
サントリービールはキャンペーンのKPIを応募者の「ユニークユーザー数」に設定しました。その理由について、宮元氏は次のように述べます。
「本キャンペーンの一番の目的は、新規のお客さまを取り込み、購入頻度を上げることです。そのため、1人でも多くのお客さまに参加いただくことを目標にしました。キャンペーン応募時のアンケート結果によると、応募者の約8割がこれまでプレモルを購入したことのない新規のお客さまだとわかっています。若者のビール離れが進む中、若年層の利用者も多いLINEで、新規獲得がうまく進んでいると分析しています」
キャンペーンのプラットフォームとしたLINEミニアプリは、さまざま流入経路が設けられています。例えば、製品に付けたQRコード入りのシール、各種バナー広告などです。中でも、酒類の情報を発信する「おとなサントリー」のLINE公式アカウントで設置している、リッチメニューからの流入がもっとも多いといいます。

また、「おとなサントリー」のLINE公式アカウントでは、キャンペーンの対象となる新商品が発売されたタイミングなどに合わせて、プレモルキャンペーンの告知メッセージを定期的に配信するなど、継続率を高める工夫を行っています。
「レシート画像から取得できる購入店舗、購入日時などの情報と、応募時のアンケート内にあるプレモルの購入頻度などの情報をクロス集計し、日々、分析を行っています。キャンペーンの進捗に応じて、お客さまに直接情報を発信できるのはLINEの大きな強みです。
現在、全体の4割以上のお客さまが2回以上キャンペーンに参加しています。本キャンペーンは2022年1月まで続くので、引き続き、LINEミニアプリとLINE公式アカウントを併用して、継続率を高く維持したいと思います」
従来のキャンペーン手法と比較して、コスト削減を実現
プレモルのキャンペーン開始から約8カ月、応募時のアンケート結果を分析した結果、キャンペーンの継続参加意向は5割を超えています。
「お客さまからは『徐々にユーザーランクが上がるのが楽しい』『プレモルを日常的に飲むようになった』など、狙い通りの反応が得られています。取引先の小売店からも、LINEを利用したキャンペーンということで大いに注目を集めることができました。LINEを使うことで、『お客さまにプッシュ通知ができる』『キャンペーンに簡単に参加できる』など、ポジティブなイメージが浸透してきたと感じます。
また、従来のハガキやWebサイト上で行っていたキャンペーンでは、各種ツールの制作費や事務局スタッフの工数が発生しますが、そうした面でも効率化が実現できたと考えています」
最後に、LINEの法人向けサービス運用に関する展望について、宮元氏は次のように語ります。
「今後はLINE公式アカウントから配信されるメッセージの出し分けを行いたいです。LINE公式アカウントで定期的に実施しているアンケートでは、『買い物するときに重視すること』など、その人の価値観を探るような項目を設けています。
それらの回答と、ユーザーのLINEアカウントを基にメッセージを出し分けられれば、品質や価格など訴求点を変えたOne to Oneコミュニケーションが実現し、1人ひとりに最適な情報をお届けできるのではないかと考えています」
(公開:2021年12月/取材・文:相澤良晃)
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※実績はサントリービール調べ