広告審査 2021.01.07

【LINE広告】昨今の健康・美容商材のNG表現の傾向と行政の動向(2)

前回(1)のコラムでは、行政側が医薬品的な効果を標ぼうしている広告になぜ厳しい対応を行っているのかという点、食品でもある程度の機能性が謳えるトクホや機能性表示食品を取り巻く規制や動向などを中心にお伝えしました。今回は、コロナ禍において問題視されがちな代表的な商材や食品類における「免疫」表現の考え方についてお伝えします。

コロナ禍における行政などの広告に対する対応

2020年、私たちの生活や働き方は思いがけない形で大きく変わらざるを得ない状態となりました。広告の世界においても、それらを意識した表現が増えてきたように思えます。ある意味、この状況を「販売機会」と解釈する方々も多いのかもしれません。しかし、「消費者保護」の観点ではどうでしょうか?

 

この領域・表現に対して、ある程度対応や対策を行っている媒体は多いと思います。行政なども早い段階からこの状況に便乗している広告に対し通常のネットパトロール体制を更に強化し、該当表現を行っている広告に厳しく対応していると聞いています。また、3月から消費者庁は定期的にコロナ禍便乗の広告表示に対して事業者への改善要請を兼ねた消費者向けの注意喚起を何度も出しており、コロナ禍で問題が多かった商材群に関する行政指導や注意喚起、措置命令なども行われています。

コロナ禍で再浮上した「空間除菌用品」の問題表現とその傾向

コロナ禍で行政が頻繁に注意喚起などを行った商材の例として、「空間の菌やウイルスの除去」を目的とした「空間除菌用品」があります。このような商材に関する措置命令や注意喚起は過去にも何度か出された事があり、新しい要素ではありません。それらの資料から、行政による指導や注意喚起は「空間除菌用品」の存在そのものを否定するものではなく、広告表示で広い空間や屋外での使用を想起させたり、特定の菌やウイルス(新型コロナウイルス含む)の除菌効果を謳っているものが問題視されているという事が伝わるかと思われます。

まず、「広い空間や屋外での使用を想起させる空間除菌用品」という表現について考えたいと思います。このような表現に関しては、空間除菌の根拠が「閉鎖空間での調査を基にしたデータ」だったのにも関わらず、広告では根拠データの環境と異なる広い空間であったり、屋外での使用でも同じような効果が期待できるような広告表現を行っているという点が大きいようです。

 

特に、最近よく見かける首に吊り下げて利用するタイプといった形状で「空間除菌」を謳う場合、景表法の不実証広告規制でよく問題視される「消費者が実際に使用すると思われる用途と根拠となるデータの内容が一致していない」という観点で指摘を受けているようです。そのため、たとえそのような根拠データがあっても、広告表現で異なった用途を謳う事は、暗示を含め不適切なものとみなされる可能性は高いかと思われます。

 

一方、雑貨で「除菌」表現を使用していても、疾病などの要因となり得る特定の菌やウイルス名を標ぼうしているなど、疾病への効果を想起させる広告は薬機法の観点でも問題となります。特に、「新型コロナウイルス」に関しては現時点不明瞭な要素が多く、かつその危険性により一般の検査機関で取り扱う事ができないため、行政側も「新型コロナウイルス」への用途や効果を謳っている商材自体が「根拠となるデータをもっていない」という解釈のようです。

 

これは「空間除菌用品」だけの話ではなく「新型コロナウイルス」に関する表現を行っている商材全体に言えるかと思います。そのため、「コロナ禍」での活用や消費者がそれらへの用途を想起させるような表現を使用している場合は、「更に悪質」と判断されているのだと思われます。

食品における「免疫」表現とその考え方

コロナ禍では、消費者も過敏になってしまう表現のひとつに、「免疫」があります。この表現を広告として使いたいという事業者もいるかもしれません。しかし、商品広告でそのような表現を見かける事は少ないのではないでしょうか。それもそのはず。従来、この「免疫」表現は通常の食品広告(※1)では使えない表現のひとつです。成分説明という前提で「免疫」を謳い、かつ具体的な商品を一切紹介していなかったケースでも、景表法観点の「顧客誘引性の有無」で判断され、措置命令に至ったという事例があります。

 

その一方で、トクホや機能性表示食品を取り巻く保健機能食品業界では「免疫」表現に関し大きな変化がありました。つい最近までトクホのみならず機能性表示食品で「免疫」表現の届出がされた製品が皆無だったことから、「保健機能食品(トクホや機能性表示食品)レベルでも、食品での免疫訴求はNG」と思われてきました。

 

しかし、2020年の夏(制度の開始から5年目にして)、ようやく「免疫」表現が含まれる届出表示をもつ機能性表示食品が登場し、「免疫」表現自体はNGでない事が明確になりました。この点に関しては「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」にも記載(※2)されていますが、どうやら機能性表示食品では限定された範囲での「免疫」のデータを以て、全身の免疫へ影響を与えるような表現を不可としているのであり、「免疫」表現を全否定しているわけではなかったようです。

 

しかし、「医薬品的な効能効果にはならない程度の免疫」のデータや表現についての判断が難しい事もあり、「免疫」表現の届出をした製品はなかなか世に出ていなかったようです。

このように、「機能性表示食品」などでは「免疫」表現が可能であることが証明されましたが、一体どこまでが食品の領域で可能な「免疫」表現なのでしょうか。

 

身体にはさまざまな免疫細胞が存在し、それぞれの対象範囲は狭いため、一種類の免疫細胞を活性化したとしても、それが「全身の免疫」に対して効果を及ぼすものではないとされています。また、一般的によく使われ、消費者が全身の免疫機能を指すようなイメージをもつ「免疫力」といった表現に関しても、「科学的根拠がない表現」というのが行政や学術者の認識のようです。そのため、学術的な根拠が必須となる領域では、「免疫力」に対する効果を示すデータなどもなく、食品などで「免疫力」という表現を使った時点で、「根拠がない表現」という認識となり得ます。

 

なお、食品で標ぼうできる保健機能の範囲は、「(全身ではなく特定の領域の)免疫の維持」程度であり、「免疫を高める」や「免疫機能の改善」といった表現は、医薬品的効能効果相当であり食品区分では云えない領域である旨を、行政担当者も機能性表示食品の事後チェック指針などの説明の機会がある度に言及・強調しています。

 

それに加え注意が必要なのが、「届出たデータ」の広告への引用についてです。機能性表示食品は届出範囲であれば、データなども適正広告基準で示された条件に沿って広告に使用する事は可能ですが、それらからの引用であっても「消費者が医薬品的な効果と誤認するような表現」はできないとされています。「保健機能の範囲か、薬理的効能効果の範囲か」というのは、実際にデータで見ないと判断できない「都度判断」の領域であり、残念ながら行政側も明確なルールは示せないようです。しかし、前回のコラムでも述べたように、トクホや機能性表示食品の業界団体なども活発に活動していくようですし、今後公表されていく情報によって更に様々な表現可能範囲が判ってくると思われます。

 

 

食品の保健機能表現の限界に挑んでいるようにも映る機能性表示食品は、広告審査にとっても悩みの種であり、かつ貴重な勉強の場でもあります。「免疫」表現を始めとする、「保健機能」と「医薬品的効能効果」の境目表現の情報には今後とも目が離せそうにありません。

【補足】

※1…(例外)ヒトを対象とした食品類と異なり、ペットフードの場合は「免疫」「免疫力」といった表現は「維持」の範囲であれば例外的に許容とされている。ただしペット用サプリメントでは「免疫」に関する言及はNG
(参照) 農林水産省「ペットフード等における医薬品的な表示について」P7. https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/y_import/pdf/pet_k_tuti.pdf


※2…消費者庁「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」P5.
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/pdf/food_with_function_clains_171227_0001.pdf