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「Redesign(リデザイン)」で進化するLINE公式アカウント―究極のOne to Oneマーケティングを実現するプラットフォームへ

2018年6月に開催した「LINE CONFERENCE 2018」で、LINEは法人向けアカウントの「Redesign(リデザイン)」を発表した。2018年12月に始まるこの取り組みで、LINEはユーザーと企業の関係性をどのように再構築していくのか。

前回の記事「LINEの法人向けアカウントのRedesign(リデザイン)とは?│サービス内容の変更点まとめ」ではリデザインによって生まれ変わるLINE公式アカウントについて解説したが、今回はLINEの広告事業立ち上げから一貫して法人向けアカウントのビジネスに携わり、リデザインプロジェクトの責任者を務める水上真介と、広告代理店やコンサルティング会社などでデジタル広告を扱い、現在はLINEで法人事業のオペレーションとマーケティングを担当する執行役員の葉村真樹に、リデザインの背景や、その先に目指す企業とユーザーのコミュニケーション像について話を聞く。

葉村 真樹(はむら まさき)
LINE株式会社 執行役員 法人事業オペレーション&マーケティング担当

1995年、株式会社富士総合研究所(当時)入社。その後、大手広告代理店、ブランドコンサル会社を経て、Google日本法人にて経営企画室兼営業戦略企画部統括部長、ソフトバンクモバイル株式会社にてiPhone事業推進室長、Twitter日本法人にて広告事業統括およびブランド戦略部門日本及び東アジア統括を歴任。AKQA日本法人代表、PwCコンサルティング合同会社にてエクスペリエンスセンター長等を経て、2017年LINE株式会社 執行役員に就任。現職。

水上 真介(みずかみ しんすけ)
LINE株式会社 コーポレートビジネスグループ ビジネス開発本部 Account事業室/SP事業企画室長

2011年ライブドア(現LINE)に入社。LINE公式アカウント、スポンサードスタンプの販売開始から現在まで事業企画を担当。

LINEは「富山の薬売り」モデル

──LINEの法人向けアカウントを開始した経緯と、当時の理想やコンセプトについて教えてください。

水上 コミュニケーションアプリ「LINE」のサービススタートが2011年6月、ユーザー数の増加に伴い、企業とユーザーによる新たなコミュニケーションの可能性に気付き、2012年6月に広告事業を開始しました。企業とユーザーが友だち感覚でコミュニケーションを取れるほか、企業にとってはデジタルにおけるマスリーチ、ユーザーにとってはLINEというメジャーなプラットフォーム上で企業からのメッセージを受け取ることができる安心感や手軽さを、LINEならではの価値と捉えていました。そこで誕生したのが、「LINE公式アカウント」と「スポンサードスタンプ」でした。

LINE公式アカウントとスポンサードスタンプは、いわゆるナショナルクライアントを中心に続々と導入が決まっていきました。その後、フレンドリーな形で企業がユーザーとコミュニケーションをとるというコンセプトは、店舗などの小規模事業者向けの「LINE@」(2012年12月)、APIによる通信で企業側のシステムと連携させて個々に最適なメッセージを配信する「LINE ビジネスコネクト」(2014年)、LINEを活用したカスタマーサポート機能を備えた「LINE カスタマーコネクト」(2017年)と広がり、企業の規模や用途を問わず、幅広く活用してもらえるようになりました。

──LINE公式アカウントが広まることで、企業と消費者のコミュニケーションはどう変化しましたか?

水上 転換点となったのは、2014年の「LINE ビジネスコネクト」です。ビジネスコネクトとは、APIを通じて企業のCRMシステムなどと連携することで、ユーザーにとって適切なタイミングで適切なメッセージが送れるメールマーケティングの置き換えになることを狙った商品です。この商品によって、企業とユーザーの双方向からメッセージのやりとりが生まれ始めました。

企業側から広告的なメッセージを一方的に配信するだけでなく、個々のユーザーにとって価値のあるメッセージに出し分けたり、便利に使える機能を設置したりなど、広告という枠を超えた「サービス」とも言える形のコミュニケーションで企業とユーザーがつながり始めたのは、大きな変化だったと言えます。

──そんなLINEの広告商品について、葉村さんは外からみてどのような可能性を感じていましたか?

葉村 LINE公式アカウントが登場したとき、「これはとんでもないものが出てきた」というのが率直な感想です。企業がアカウントを持ち、ユーザーとコミュニケーションを取るという点では、当時から同様のコンセプトを掲げるSNSが存在していました。ただし、プッシュ通知によってメッセージを確実にユーザーにリーチさせられるという点で、LINEは他のSNSと大きく異なる強みを持っていると感じました。

当時、私が営業先や講演でよく話していたのが、「LINEの広告は、『富山の薬売り』のモデルに近い」ということです。担当者が定期的に家にやって来て顧客とコミュニケーションをとり、必要な薬を置いていってくれるビジネスモデルですが、LINEも同様です。ユーザーが毎日使っているコミュニケーション(トーク画面)に企業がやって来て(プッシュ通知)、薬の代わりにメッセージやクーポン、スタンプなどを置いていく。デジタルでありながら、富山の薬売りのようなアナログに近い関係性を顧客と築くことできることに、LINEの可能性を強く感じていました。

──可能性を感じる一方、どんな課題があると考えていましたか?

葉村 一つは参入障壁の高さです。価格設定が原因でLINE公式アカウントは大企業しか持てず、LINE@はカジュアルすぎてブランドとして使いにくい側面がありました。もう一つは、企業からのメッセージ配信が「一斉配信」で行われることが多く、マスリーチ的なアプローチから脱却し切れていなかった点です。もっとインタラクティブな「One to One」のコミュニケーションを促進できないか。そこに、LINE公式アカウントの「伸びしろ」があると考えていました。

ユーザー視点での価値を再定義し、サービスデザインを再構築する

──今回のリデザインに際して、LINEの広告商品のあり方について二人の間でどんなことを話し合いましたか?

葉村 LINEに入社して水上と初めてLINEの広告商品のあり方について話した時、「ユーザーの感情を大事にしたい」という彼の言葉が印象に残っています。リーチやメッセージの配信数といった広告主側の視点ではなく、ユーザー視点が最初に出てくることにLINEの文化を感じました。

水上 LINEでは「それがユーザーにとって、価値のあることなのか?」という問いが、営業から開発に至るまで職種を超えて議論されています。「儲かるからいい」は、通用しません。

ユーザーにとって価値のある広告という視点で考えた時、たとえばLINE公式アカウントからのメッセージであれば、自分宛に送られてきたという認識を与えることが大切です。そして、メッセージを「自分ごと化」するためには、企業からユーザーに送られるメッセージがユーザーにとって関連性が高いものである必要があります。では、そのためにLINEは何をすべきか。必要なのは、プロダクトを横断したデータの収集や活用を進めていくことだと考えました。

このように、 LINEがユーザーにとって価値のあるプラットフォームであり続けるためにすべきことを広く議論していった結果、ユーザーと企業のコミュニケーションのあり方を再構築する必要があるという答えに至りました。それが、根本からLINEの広告事業をデザインし直す「リデザイン」です。

ユーザー視点でのリデザインが、広告主への貢献に

──アカウントだけではなく、LINEの広告プラットフォーム全体のリデザインと考えて問題ないでしょうか?

水上 プロダクトについては、バックエンドもアーキテクチャから抜本的に作り直しています。急速に成長する中で、増築を重ねてきた法人向けアカウントの各ブランドをゼロベースで再構築することで、今後の機能開発スピードを高め、インターナショナルを含めてプロダクトの質を高めていきたいという狙いがあります。

葉村 プラン面においては、月額0円からの導入しやすい固定費に従量課金を組み合わせた料金体系モデルに変更します。世の中の多くのサービスが、使った分だけ払う従量課金のモデルから、定額制のサブスクリプションモデルにシフトしている中、時代に逆行しているように見えるかもしれません。しかし、企業がLINE公式アカウントを通じてユーザーに価値を提供していくための、より適した変更であるとの判断です。

導入コストがこれまでと比較して大きく下がることは、LINEユーザーに「多くの選択肢を与える」ことを意味します。従来は価格条件から企業がブランドごとに複数のアカウントを持つことが難しい状況にありました。リデザイン後は企業がブランドごとのアカウントを開設しやすくなることにより、ユーザーはより趣味嗜好に合致したブランドと友だちになる機会が増えるはずです。なお、価格面だけでなく、機能面でも企業がユーザーに対してデータを活用して適切なメッセージを配信できるよう、レポートや配信機能の改善などにも取り組んでいきます。

究極のOne to Oneマーケティングプラットフォームを目指して

──リデザインでLINEが目指す世界観とはどんなものでしょうか?

水上 究極の理想は、企業とユーザーがつながっている中で、ユーザー起点のコミュニケーションからビジネスが生まれることだと思っています。LINE@の活用事例には、「1:1トーク」機能を使って顧客が店主に直接コミュニケーションをとる形の注文が、売上の9割を占めている例もあります。

企業とユーザーの自然なコミュニケーションの中からビジネス的な価値を創出するためには、企業が「ユーザーとの関係性を強めること」にモチベーションを見出だせるような仕組みが必要だと考えています。たとえば「企業とユーザーの関係性が強いほど、アカウントの運用費が安くなる」なども、将来的には面白いかもしれません。

葉村 コミュニケーションのあり方は今後も多様化していき、その変化を予測することは困難ですが、「相手が誰かを知り、その人と適切なコミュニケーションを取れる」ことが重要であることに変化はありません。

今回のリデザインは、企業がユーザーを知るためのデータを整え、個々に合わせたコミュニケーションを実現するための選択肢を増やす取り組みです。スタートしたばかりですが、LINEが究極のOne to Oneマーケティングを実現するプラットフォームになるための進化だと認識してもらえればと考えています。

(取材・文:阿部欽一、写真:小川孝行)