セミナーレポート 2019.08.22

LINE公式アカウントとLINE Pay APIで広がる新たな購買体験

2019年7月25日、LINEは「Technology Partner *向けLINE Pay APIセミナー」を開催しました。現在、ユーザー獲得を目指して各社がキャンペーンを繰り広げるキャッシュレスサービスにおいて、同セミナーではLINE Payの最新概要や、LINE公式アカウントに決済機能を持たせるLINE Pay API、その他の各種APIや関連サービスを組み合わせることでユーザーに提供できる新たな購買体験について発表されました。事例とともにセミナーの内容を紹介します。

  • LINEの広告商品やLINE公式アカウントの導入にあたって、技術支援を行う企業

新プランに生まれ変わった「LINE公式アカウント」

2018年12月、LINEは法人向けアカウントの「リデザイン」を発表し、翌2019年4月に新プラットフォームの「LINE公式アカウント」をリリースしました(リデザインについて、詳しくはこちら)。

 

新たなLINE公式アカウントは0円からスタートできる従量課金制の新料金プランを採用し、各プランによって定められた月ごとの無料メッセージ通数を越えた分だけ料金が発生する仕組みです。これにより、企業や店舗の別なく、それぞれの用途や目的に応じて柔軟なアカウント運用が可能になりました。

料金プラン表

新料金プランのLINE公式アカウントの料金体系(1カ月単位)

また、LINE公式アカウントは各種APIを組み合わせることで、活用メリットがさらに広がります。LINEが提供するモバイル送金・決済サービスである「LINE Pay」のAPIもその一つです。LINE公式アカウントにLINE Pay APIを組み合わせることで、企業や店舗は国内3,600万人(2019年7月時点)のLINE Payユーザーに向けて、キャッシュレスサービスを提供することが可能になります。

ユーザーと企業・店舗の双方にとって有用なLINE Pay

セミナーでは、LINE Pay加盟店の事業開発を担当するLINE Pay株式会社の橋本亘平が登壇し、LINE Payの最新概要について解説しました。

LINE Pay 橋本の写真

LINE Pay株式会社 ソリューションコンサルティングチーム 橋本亘平

「LINE Payは、当初のLINEのファミリーサービスでの決済や送金を行うサービスから、国内171万カ所でのスマートフォン決済利用、外貨両替や請求書支払いもできるウォレットサービスへと進化しました。登録ユーザー数の規模に加えて、グローバルで741万人、国内490万人という月間のアクティブユーザー数から見ても、国内で最も使用されているスマホ決済サービスといえると思います」(橋本)

LINE Payの概要図

ユーザーの拡大に合わせて懸念されるセキュリティ面についても、「しっかり対策している」と橋本は力説します。日常的に使われるLINEアプリとは異なるLINE Pay専用パスワードを設けるほか、24時間365日体制で不正利用を防止するモニタリングが行われているなど、さまざまな取り組みを進めています(詳しくはこちら)。

 

また、セミナーではユーザーや加盟店の利便性をさらに高める取り組みについても言及されました。

 

「先日、オンライン加盟店向けのサービスである『LINE Checkout』機能をリリースしました。ECサイトに導入すれば、ユーザーが支払い情報を入力する画面でLINE Profile+*に事前に登録した氏名や住所などのユーザーの情報を呼び出せるので、決済完了までにかかる手間を省くことができます。また、加盟店にとっては、この手間から生じる機会損失を防ぐことが可能になります。一般ユーザーと事業者側双方に利便性を提供できるという点で、これはたいへんLINEらしい機能だと考えています」(橋本)

  • ユーザーがあらかじめLINEに登録した氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどの情報を、ユーザーの同意に基づき、LINE関連サービスで利用できる

また、その他の各種APIの組み合わせで実現する購買体験として、外部サイトをLINE上で立ち上げることができる「LINE Front-end Framework(LIFF)」について紹介。LINE Pay APIとLIFFを組み合わせることで、ユーザーはLINEのトーク画面からブラウザ遷移することなく、ECサイトなどを利用することができます。

LIFFを使った購買体験のイメージ図

さらに、オフラインの場で直接ユーザーにアプローチできる「LINE Beacon」を使えば、店頭を訪れたユーザーは、後日、企業や店舗から送られてきたリコメンド情報をもとに商品やサービスを購入することが可能になります。

LINE Beaconを使った購買体験のイメージ図

続いて、LINE株式会社 Developer Advocateの中嶋一樹が登壇し、LINEが目指すUXを表現したデモ動画を披露しました。

チャットボットとやりとりの中で、ユーザーはスマホ上でキーボードを立ち上げることなく、タップとスワイプのみで商品を購入できる

「LINE公式アカウントに『LINE Pay API』とチャットボットを構築する『Messaging API*』を組み合わせることで、ユーザーはブラウザ遷移やキーボード入力によるストレスを感じることなく、タップするだけで商品を選択し、購入に必要な情報を入力すれば決済が完了できるようになります。ECサイトでよく見られる『カート落ち』の減少が期待できるため、企業や店舗のコンバージョン率を改善するUXになると見込んでいます」(中嶋)

  • プッシュメッセージや応答メッセージなど、ユーザーとの双方向のコミュニケーションを可能にするAPI。上記デモ動画では、このAPIによりユーザーの要望をくみ取った自然な会話が成立している

LINE株式会社 Developer Advocate 中嶋一樹

エンジニアフレンドリーなLINE Pay API

事例の紹介では、顧客体験軸でのソリューションを提供するクラスメソッド株式会社の諏訪悠紀氏が登壇。同社がプロデュースする「Developers.IO CAFE」では、LINE公式アカウントにLINE Pay APIなどの各種APIを組み合わせ、トーク画面上でドリンクの注文から決済までを行い、商品を店頭で受け取ることができるモバイルオーダー方式のサービスが提供されています。

Developers.IO CAFEでユーザーに提供されている「モバイルオーダー」と「ウォークスルー決済」のイメージ映像

「Developers.IO CAFEのLINE公式アカウントには『LINE Pay API』と『Messaging API』を実装しています。そもそもLINE Payを採用した理由は、プラットフォームであるLINEの持つ“信頼感”が、さまざまな情報がひも付くキャッシュレスサービスに欠かせないというのも大きかったですね」(諏訪氏)

クラスメソッド 諏訪氏の写真

クラスメソッド株式会社 CX事業本部 諏訪悠紀氏

続いて登壇したクラスメソッドの中村優輝氏は、開発・実装面におけるLINE Pay APIの優位性を次のように強調します。

 

「とにかく簡単です。サーバーレスの環境下でも実装が可能な上、ノンコーディングで使える『LINE Bot Designer*1』や『Flex Message Simulator*2』などの開発支援ツールも活用したので、チャットボットの要件定義は1日足らずで終了し、プロジェクトのキックオフからリリースまでにかかった時間は約1週間でした」(中村氏)

  • 1 通常のトークはもちろん、リッチメニューやリッチメッセージなどのメッセージテンプレートのほか、チャットボットの動作もテストできるプロトタイプ作成ツール

  • 2 LINEが提供するFlex Message(コンテナ、ブロック、コンポーネントなど複数要素からなるメッセージ)を、実際に送信せずにそのレイアウトを確認できるツール

クラスメソッド 中村氏の写真

クラスメソッド株式会社 CX事業本部 中村優輝氏

また、現在は自社アプリにしかない「ウォークスルー決済」(入店時にQRコードをかざすだけでDevelopers.IO CAFE内でお菓子が買える機能)を、今後、LINE公式アカウントにも搭載したいと展望を語る中村氏。LINE公式アカウントにLINE Pay APIなどの各種APIを組み合わせることで実現する新たな購買体験は、今後ますます広がりそうです。

 

(取材・文:長尾和也、写真:山﨑美津留)