LINE CX SUMMIT 2018レポート(前編)〜AVAYAセッション:東京海上インターナショナルアシスタンス株式会社の事例〜
7月11日にLINE CX SUMMIT 2018を開催しました。本レポートでは当日行われた講演の中から、オープニングセッションで話された内容と、日本アバイア株式会社の講演をレポートします。

オープニングセッション
昨年リリースされたLINE カスタマーコネクトのコンセプトや機能についてLINE株式会社の飯塚が説明を行いました。ボット対応と有人対応をハイブリットに活用でき、音声とテキストをシームレスに連携できるという2つの大きなコンセプトのほか、以下の4つのオプションについても言及されました。
―Auto Reply:ボットによる応答
―Manual Reply:有人チャットによる応答
―LINE to CALL:LINEを使って音声通話でコンタクトセンターに着信
―CALL to LINE:音声の自動応答と連携
飯塚が「自由に組み合わせて、様々な場面で活用できるように提供しています」と強調するLINE カスタマーコネクトですが、6月30日時点で、53のアカウントが開設され、月間のユーザー数は100万人超、月間の問い合わせ数は270万件になっています。
飯塚は、このサミットで、多くの企業の導入事例やパートナー企業が提供するサービスを知ってほしいと呼びかけ、オープニングセッションを結びました。

導入事例
◆登壇者◆
日本アバイア株式会社(以下、日本アバイア)
ストラテジックサービス本部 部長 内山知之氏
グローバル規模でコンタクトセンターやオフィスの電話ソリューションを提供するベンダーで、国内の多くのコールセンターが同社のサービスを利用している。外資系ベンダーにも関わらず、開発チームを社内に持ち、日本の顧客ニーズに合わせたサービスやプロダクトを提供しているのが特徴的。

東京海上インターナショナルアシスタンス株式会社(以下、INTAC)
業務企画部兼医療サービス部 部長 鈴木康敬氏
保険加入者が海外旅行中にトラブルに遭った時のために、24時間365日オペレーションセンタを開設し、保険加入者のサポートを担う。世界各国に国際フリーダイヤルという回線を設けて電話応対を行っているが、各国の通信状況が不安定であることから、安定的な通信環境をどう確保するかを模索した結果、LINE to CALLの導入を決定。

LINEの横断的活用でカスタマーエクスペリエンスを向上
コンタクトセンターのソリューション拡大を目的に、約2年前からLINEのエンジニアと共同でLINE to CALLやCALL to LINEのシステム開発を進めていた日本アバイア。同社がLINEと連携する大きな理由の一つとして、LINEは電話をかけることも、メッセージを受け取ることもでき、機能の横断的な利用が可能だからと話す内山氏は「応用すればユーザーごとにより決め細やかな対応ができるようになる」と強調します。

日本アバイアは、顧客情報管理における従来の課題の一つとして、企業の部署間で顧客情報が共有されていない点を指摘します。企業のコンタクトセンターの取り組みとマーケティングの取り組みが分かれて運営されているケースが多いことから、企業内で顧客情報が共有されておらず、同じ顧客に対して部署ごとにバラバラの対応をとってしまうケースがあります。カスタマーエクスペリエンスの観点から、内山氏は「顧客から見れば、電話での問い合わせでもWebでの問い合わせでも同じような対応を取れる環境を作り出すことが求められている」と述べ、その状況を実現するためにLINEを活用すべきだと話しました。


LINEを使ったオートリプライが顧客対応と企業の人材活用を変える
次に内山氏は、音声連携ソリューションの一つとして、LINE to CALLやCALL to LINEを紹介しました。よくある事例として、電話で問い合わせをした時に回線が通じるまで待たされるケースを挙げた上で、その時に「LINEでも応答できます」といったガイダンスを流すことができれば、LINEでAuto ReplyやManual Replyに顧客を誘導することができると内山氏は話します。結果として、企業はLINE to CALLに顧客を誘導しやすくなるため、LINEの友だち獲得を狙える上、Auto ReplyやManual Replyに導くことで、担当スタッフを減らすなど人材の有効活用ができるメリットが生まれると説明しました。

顧客IDはLINEのアカウントと連携を
また、顧客のID管理について内山氏は、同じ顧客にも関わらず、コールセンターやWebサイトといったそれぞれの部署で管理するIDが異なる場合には、LINEを活用することがIDの一元管理に適していると話します。「LINEはアカウントが電話番号と紐付けられているので、同じ顧客と認識されるようになります。その結果、マーケティングの部署が持つLINEの情報とコールセンターが持つ問い合わせの履歴情報を結びつけることができ、顧客へよりきめ細やかな対応ができるようになる」と説明しました。
LINE to CALLを活用したきめ細やかな顧客支援
内山氏によるプレゼンテーションのメインとも言えるのが、LINE to CALLの機能です。これは、LINEのリッチメニューからタップをしてコールセンターに電話を掛けた際に、LINEアカウントが発信元となってセンターに着信するというもの。この後に紹介する、INTACのケースがこれに該当しますが、LINEアカウントと電話番号が紐づいていれば「その情報もCTIに渡すことができ、これまでのユーザー情報と結びついた細やかな対応が可能になります」と説明。StationLinkという日本アバイアのUI画面を表示し、携帯電話番号とユーザIDが表示される様子が紹介されました。

次に、内山氏にはLINE to CALLの実用例を2つご紹介いただきました。1社目はトランスコスモス株式会社がLINEと共同で2017年末に設立した「全国SNSカウンセリング協会」です。若年層のいじめ相談をLINEで受け付けるという取り組みですが、スタート当初はチャットをベースにした問い合わせ形式をとっていました。しかし、相談の中身や深刻度などからカウンセラーが「チャットではなく会話をした方がいい」と判断した相談者に関しては、音声通話をそのまま始めるという仕組みで運用されています。

2社目はLINE to CALLを使用するINTACです。内山氏は「国際電話ではなくインターネット回線を使っているので、電波状況に左右されることが少なく、音声もクリアに聞こえるというメリットがあります」と話します。

コールセンターへの連絡は家族への連絡感覚で
INTACがLINE to CALLを導入したのは今年3月。使い方に関して、顧客から問い合わせを受けたことは導入時から1件もないと鈴木氏は話します。LINE to CALLについて「普通に使える」と語る鈴木氏ですが、その操作に複雑な手順はなく、LINEアプリから友だちや家族へ電話するのと同じように、コールセンターに電話をかけるだけ。一方のコールセンターも従来と同様に掛かってくる電話を受けるだけでよく、まさに誰でも“普通に使える”サービスです。
LINE to CALLの導入前は、海外旅行中の被保険者がトラブルに遭った場合、直接話をするのが難しい状況だったと話す鈴木氏。というのも、海外旅行者は日本で使用している端末を現地でも使い続けることが多く、トラブルが起きた際には国際フリーダイヤルよりもLINEを使って国内にいる家族や友人に助けを求めるため、コールセンターは被保険者から連絡を受けた国内の家族や友人を通じてのやり取りになりがちです。結果として、被保険者が置かれた詳しい状況を把握するには手間と時間が掛かっていたそうです。しかし、LINE to CALL導入後には「海外にいる被保険者と直接やり取りできるようになったので、スムーズにサービスを提供できるようなりました」と鈴木氏は話します。

LINE to CALLの導入で国際通話料を圧縮
自社でアプリを開発した場合、開発コストもかかる上、利用者がインストールをしてくれるのかどうかを見通すのは難しかったと話す鈴木氏ですが、LINEにはすでに7600万人以上のユーザーがいるため、安心してLINE to CALLの導入を進められたそうです。
また、導入前後のオペレーションの違いについて鈴木氏は、顧客への折り返しの電話が掛けられない点を指摘。企業側から連絡する必要がある時には、折り返しの連絡が欲しい旨をLINEのトークで送っているそうですが、顧客からのネガティブな反応はないと話します。
LINEを活用したINTACの今後の展開
最後に鈴木氏は、保険請求手続きの簡略化と迅速化について、例えば保険請求に必要な書類をpdfでLINEに送り、顧客から壊れた物品の写真を送ってもらうようにすることで、迅速な保険金の支払いに繋がるだろうと今後の展開について話しました。
また、もしも海外で病院に行きたい場合に、コールセンターが当該診療科のある病院を調べ、顧客のLINEに位置情報を送ることが可能になれば、顧客は届いた位置情報を基に病院に行くことができるようになる、というサービス拡充に向けたアイディアも披露しました。
音声認識やAIを組み合わせて充実した顧客対応を
一方、日本アバイアの今後の展望については、音声認識やAIエンジンを組み合わせることで、様々なカスタマーエクスペリエンスの提供を目指すと強調した内山氏。
その1つが、処理の自動化です。外部の音声認識ソリューションと連携することで、音声合成による顧客への返答が可能になるため、航空券の予約を全て音声だけでできるようになれば、さらに効率的な顧客対応が可能になると見通しを語りました。



また、LINEのプロモーションを見てWebサイトに問い合わせをした人物のプロファイルに合わせて、最も購買率が上がるような対応をとる、などといったことも将来的に取り組みたいと意気込みを語りました。

LINE CX SUMMIT 2018レポート(後編)に続く
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