セミナーレポート 2018.10.30

LINEの最新機能が満載!福岡市「粗大ごみ受付Bot」を大解剖

2018年9月19日、LINE株式会社(以下、LINE)が福岡市と取り組むサービス「AIチャットボットを活用した粗大ごみ収集受付(以下,粗大ごみ受付Bot)」の実証実験がスタートしました。同実証実験では、LINE公式アカウント「福岡市粗大ごみ受付」を友だち追加することで、スマートフォンからチャットによる会話で簡単に粗大ごみ収集の申し込みを行うことができます。

「福岡市粗大ごみ受付」 LINE公式アカウントの画面イメージ

「福岡市粗大ごみ受付」 LINE公式アカウントの画面イメージ

2018年10月3日には、LINE Fukuoka株式会社が「LINE Developer Meetup」を開催。Bot開発に興味を持つエンジニアを対象に、粗大ごみ受付Botで使用されている「LINE Front-end Framework(LIFF)」や「Flex Message」など、LINEの最新機能の紹介と解説を行いました。

開始2週間で友だち数が7,000人を突破

セミナー冒頭では、福岡市 総務企画局 企画調整部 Society5.0担当の稲永麻子氏と小椋潤氏が登壇し、プロジェクト実現までの背景を明かしました。

稲永麻子氏

福岡市 総務企画局 企画調整部 Society5.0担当 稲永麻子氏

「福岡市では、AIを活用した新たな製品やサービスの創出を目指す『Fukuoka AI Community(福岡AIコミュニティ)』を運営しています。そこで、会員の皆さまに、市の行政サービスをより使いやすくするような提案を募集したところ、LINE、株式会社オルターブース、さくらインターネット株式会社の3社によるチームから提案をいただきました。その提案で対象としたのが、粗大ごみ収集の申し込みサービスでした」(稲永氏)

「福岡市では、粗大ごみの受付方法にWebフォームを導入していましたが、8割以上の市民が電話からの申し込みという状況でした。そこで、今回の提案を受け、行政サービスの向上と効率化を目指して粗大ごみ受付Botの実現に向けて動き出しました。現在、サービス開始から2週間が経過しましたが、現時点でアカウントの友だち数は7,000人を突破し、予想を上回るスピードで増えています。また、粗大ごみ受付Botからの受付数は既に全体の2割を占めている状況です。LINEを使って手軽に粗大ごみの申し込みができるというサービスが、市民に受け入れられていることを実感しています」(小椋氏)

小椋潤氏

福岡市 総務企画局 企画調整部 Society5.0担当 小椋潤氏

新機能が満載の粗大ごみ受付Bot

このように多くのユーザーから受け入れられた背景には、UXを最適化するための工夫がありました。UXを最適化するために粗大ごみ受付Botに搭載されたLINEの最新機能について、LINE株式会社 Developer Relationsチームの中嶋一樹がデモを交えて解説しました。

中嶋一樹

LINE株式会社 Developer Relationsチーム 中嶋一樹

LINE Loginの画面イメージ

粗大ごみ受付Bot内で活用されている「LINE Login」。あらかじめ情報を登録したユーザーは入力を省くことができる。

Flex Messageの画面イメージ

粗大ごみ受付Bot内で活用されている「Flex Message」。ボタンを押すだけでリプライを送ることができ、ほとんどのメッセージに使用されている。

Quick Replyの画面イメージ

粗大ごみ受付Bot内で活用されている「Quick Reply」。表示される選択肢をタップするだけでリプライを送ることができる。

「その他、申し込み時のユーザーのストレスをなくすために使ったのが『LIFF』と動的なリッチメニューです。一般的に、LINEからフォーム入力に遷移する場合には外部のウェブフォームと連携することが多いですが、『LIFF』を使用するとLINEのトーク上でブラウザが立ち上がり、入力したデータとメッセージのシームレスな連携が可能になります。また、ユーザーにとって見やすい画面にするために、ユーザーの操作に反応して自動で動くリッチメニューを用いて、必要がなくなったメニューを非表示するなどの工夫も行いました」(中嶋)

LIFFの画面イメージ

粗大ごみ受付Bot内で活用されている「LIFF」。トーク画面上でブラウザが立ち上がり、フォームに入力した情報をメッセージに連携させることが可能。

リッチメニューの画面イメージ

粗大ごみ受付Bot内で活用されている動的なリッチメニュー。リッチメニューをタップしてメッセージの送信が完了すると、不要になったリッチメニューが自動で非表示になる。

「また、粗大ごみ受付BotはメディアなどでAIを活用した取り組みだと紹介されていますが、これまで説明した機能にAIは活用されていません。AIを活用した粗大ごみの申し込みでは、実はこれまでお伝えした操作は必要ありません。ユーザーがトーク上のテキスト入力でスマートフォンに話しかけるだけで、AIがそれを理解して粗大ごみの申し込み手続きを進めてくれます。ユーザーが使い方を覚えるのではなく、ユーザーの言葉を理解して学習していくことで、ユーザーのリテラシーレベルに左右されないサービス提供を可能にしたのが、AIを搭載したChatbotです」(中嶋)

NLU(自然言語理解)によるChatbotの真髄

トーク上のテキスト入力で話しかけると、それに対する回答がAIを搭載したChatbotから返され、粗大ごみ受付の手続きが進んでいきます。

続いて、粗大ごみ受付Botのサーバーを提供するさくらインターネット株式会社と、開発パートナーである株式会社オルターブースから、各社のサービス特徴や粗大ごみ受付Botのサーバー構造についての説明がありました。

横田真俊氏

さくらインターネット株式会社 エバンジェリスト 横田真俊氏「さくらインターネットのクラウドの特徴は、価格体系が非常にわかりやすくシンプルな点です」

櫻井裕氏

さくらインターネット株式会社 セールスマーケティング部 九州ユニットマネージャー 櫻井裕氏「福岡オフィスでは、Fukuoka Growth Next(福岡の中心地にある官民共働型のスタートアップ支援施設)の運営にも福岡市と一緒に携わっています」

藤崎優氏

株式会社オルターブース 業務執行役員COO 藤崎優氏「オルターブースは2015年に始まったまだまだ若い会社。2018年4月からさくらインターネットのパートナーとなっています」

加藤司氏

株式会社オルターブース テクニカルアーキテクト 加藤司氏「粗大ごみ受付Botの実行基盤を、オルターブースがさくらインターネットのサーバーの上で構築しています。さくらインターネットの良いところはデータ転送による従量課金がなく、費用が抑えられることです」

LINE・株式会社オルターブース・さくらインターネット株式会社の役割

LINE・株式会社オルターブース・さくらインターネット株式会社の役割

Botの可能性を広げる最新機能「LIFF」「Flex Message」「Quick Reply」「LINE Login」

後半のセッションでは、粗大ごみ受付Botに搭載されている各機能のProduct Managerを務めるLINEの 清水大輔、小野侑一、御代田亮平が登壇し、粗大ごみ受付Botに活用されている4つのテクノロジー「LIFF」「Flex Message」「Quick Reply」「LINE Login」の技術的な説明を行いました。

清水大輔

LINE株式会社 UIT室 清水大輔「『LIFF』を使えば、簡単にLINE上でWeb Application を作成することができます。さらにFlex Message など他のAPIと組み合わせることで、LINEのトーク内で提供できる機能の幅が広がります」

「LINE QUICK GAME」と「tenor」

現在、「LIFF」を活用したLINEのサービスには、LINE上でゲームが楽しめるゲームサービス「LINE QUICK GAME」と、LINEのトークでGIFを送れる「tenor」がある。

小野侑一

LINE株式会社 開発1センター 小野侑一「『Flex message』を使えばさまざまなフォーマットで自由にメッセージを送ることができます。また、『Quick Reply』を使えば、多くの選択肢をトークルームの下でさりげなく表示させることができます」

Flex messageの画面イメージ

「Flex message」でテキスト、画像、ボタンを自由にレイアウトしたメッセージの作成が可能。

Quick Replyの画面イメージ

「Quick Reply」では、メッセージ送信、ポストバック、日付選択、カメラ起動、カメラロールを開く、位置情報の共有など、多様なアクションにつながる選択肢をトークルームの下にさりげなく表示させることができる。

御代田亮平

LINE株式会社 開発1センター 御代田亮平「『プロフィール+』とは、自分自身のデータをLINEアカウントに保存することができる機能。『LINE Login』については、今後QRコードや生態認証を用いたログインもリリース予定です」

「プロフィール+」で保持できるデータ属性

「プロフィール+」で保持できるデータ属性。これらのデータをLINE Login上で提供されるAPIやSDKを経由して共有することが可能。

おわりに

100名近くのエンジニアが集結し、盛り上がりを見せた今回のLINE Developer Meetup。「今回紹介したLINEの最新機能を活用し、今までは実現不可能だと思っていたことでもぜひチャレンジしてもらいたい」と話し、中嶋はセミナーを締めくくりました。

企業のLINE公式アカウントを運用されている方も、最新機能を活用してUXを向上する方法を考えてみてはいかがでしょうか。