LINEで宅配ボックスを解錠?Clovaに話しかけてタクシー配車? LINE Things、Clovaのビジネス活用の可能性
2019年3月13日、LINE ThingsとLINE Clovaをテーマとした勉強会が、LINEのTechnology Partner(*)向けに開催されました。LINE ThingsやLINE Clovaとは何か、LINE公式アカウントとの連携によって何が実現できるのかを中心に同イベントの模様を紹介します。
Technology Partnerとは、 LINEの広告商品やLINE公式アカウントの導入にあたって、技術支援を行っていただいている企業のことです。
LINE ThingsでIoTサービスの幅は飛躍的に広がる
近年、IoT(Internet of Things)という言葉を耳にする機会が増え、さまざまな場所であらゆるモノがインターネットを介してつながる時代になりました。IoT活用の可能性を検討している企業も増加しています。LINEと連携が可能なIoTデバイス(*1)としてLINEチェックインにも活用されている「LINE Beacon」や、 AIアシスタントの「LINE Clova」を搭載したスマートスピーカーがありますが、その他の様々なBluetooth LE(*2)を搭載したデバイスと LINEアプリを連携させるために必要な機能を提供するのが、「LINE Things」です。LINE Thingsを活用することで、 LINEアプリを操作してコーヒーマシンでコーヒーを入れたり、宅配ボックスを開錠したり、腕に付けた運動量計から自動で取得した心拍数などの情報をLINEに通知したり、といったことが可能となります。
(*1)本記事ではインターネットに接続した家電・電子機器を総称して「IoTデバイス」と記述します。
(*2)Bluetooth Low Energyの略。イヤホンやスピーカーなどで使われるBluetooth Classicとは大きく仕様が異なり、省電力を目指したもので、通信速度は遅く、できることも限られるが、使い方によっては電池駆動でも数カ月〜数年の駆動時間を実現できることが特徴。
各社において専用のスマートフォンアプリを開発して同様のIoTサービスを提供することが可能な中、LINEでIoTサービスを提供することによってユーザーに提供できる価値を、LINE株式会社Developer Product室でLINE Thingsの開発を担当する髙久裕央(以下、髙久)はこう説明します。

「IoTサービスが普及するにつれて、いくつかの課題が見えてきました。まずは、デバイスの共有です。例えば、スマートロックを設定してアプリをダウンロードし、さらにアプリでも設定を行って、アプリを操作してスマートロックを解錠する。自分ができたとしても、それを家族や友人に使ってもらおうとすると一気にハードルが上がるというのが実情でしょう」(高久)
高久は続けて、宿泊施設で鍵を開ける、美術館で作品をインタラクティブに操作するなど、利用が1回だけに限られているサービスの場合、そのためだけにアプリをダウンロードさせることが、果たしてユーザーにとって便利と言えるのかと投げかけます。
「こうした課題に対して、誰もが日常的に使っているアプリだからこそ、学習コストが少なく、シェアがしやすく、ダウンロードの必要がなくすぐに使える、という価値をユーザーに提供できるのが、LINE Thingsです」(髙久)
さらに、LINE Thingsを活用することは、企業側にとっても利点があるといいます。
「まず、専用のスマートフォンアプリを開発する必要がないという点で、開発障壁がぐっと下がるでしょう。また、LINE Thingsのトライアルを使えば、多少機能に制限はあるものの、無料で利用を開始することができます。無料でモックを試作し、それをもとに企画会議などでプレゼンテーションを行うことも可能です」(髙久)
そして、これらを可能にするLINE Thingsの主な機能について説明します。
「LINE Thingsが提供する機能は3つあります。まずは基本となるLINEと連携するデバイスの登録・管理を行える『デバイス連携機能』です。そして、デバイスと LINEを連携させた後、さまざまなサービスを自由に開発することができる機能が『LIFF BLE』と『自動BLE通信』です。『LIFF BLE』とは、IoTデバイスと通信できるウェブアプリをLINE内で動くウェブアプリのプラットフォームである『LIFF』上に実装することを可能にする機能で、『自動BLE通信』はユーザー操作不要でLINEアプリとIoTデバイスの通信を可能にする機能です」(髙久)
「LIFF BLE」と「自動BLE通信」への理解を深めるため、活用のヒントとして会場では4つのデモ動画が紹介されました。
体重計のデータをLIFFで表示(LIFF BLEを利用)
二次元コードから簡単にデバイス連携を行い、体重計からデータを取得してLIFFで体重を表示することができます。
LIFFで表示した画像をディスプレイに転送(LIFF BLEを利用)
LIFFで表示した画像を、超薄型ディスプレイに転送することができます。イベントでユーザーが展示物をインタラクティブに楽しむなどの活用方法が考えられます。Wi-Fiなどのインターネット通信を必要としないため、設置コストが抑えられることも利点です。
センサーで取得したデータをLIFFを使ってサーモグラフィーで表示(LIFF BLEを利用)
体重計のデータをプッシュ通知で送信(自動BLE通信を利用)
自動BLE通信機能を利用すれば、LIFFでリアルタイムに体重計のデータを確認できるだけではなく、 LINEアプリを開くというユーザーアクションを必要とせずに、データをメッセージでユーザーに送信することが可能です。
上記のような機能を活用したIoTのビジネス活用について、髙久は次のように述べ、セッションを締めくくりました。
「デモでも紹介した体重計のような既存の家電製品を、LINEで操作できるIoTデバイスに置き換えていくという取り組みが考えられます。中でも、プリンターのカートリッジなど消耗品を販売するビジネスモデルや、利用するごとに課金される自動販売機などは、特に LINEとの相性がいいと考えています。
しかし、今後IoTの活用について考えていくべきなのは、家電メーカーに限りません。例えば、生命保険会社が加入者に無料で運動計を配り、健康状態によって保険料を変えるといった新しいサービスを生み出すことも可能でしょう。LINEを活用すれば、IoTの利用シーンや、提供できるサービスの幅は飛躍的に広がります。ユーザーとのコミュニケーションを促進することができる、 LINEというスケーラブルなプラットフォームを生かした自社ならではのIoTサービスの可能性について、ぜひ考えてみてはいかがでしょうか」(髙久)
LINE ClovaとユーザーのLINEアカウントや LINE公式アカウントを連携すれば生活はより便利に
次に、LINE株式会社Developer Relationsチームの比企宏之(以下、比企)が登壇し、LINE Clova(以下、Clova)とは何か、そしてClovaで実現できることについて説明しました。
「Clovaとは、Clova WAVEやClova Friendsなどの LINEが提供するスマートスピーカーに搭載されたAIアシスタントです。Clovaスキルによって、Clovaの機能を拡張してユーザーの生活をより便利にすることができます」(比企)

現在、Clovaで実現できることは大きく分けて以下の5つ。
ユーザーとの音声対話
ユーザーアカウント連携
チャットボット連携
ディスプレイ表示
ホームIoT連携
これらの機能によってClovaで実現できることについて、現在Clovaスキルストアで公開されているスキルを具体例に挙げて説明が行われました。

基本機能の音声対話。AIがユーザーの発話を理解し、対話を実現します。

Clovaスキル「Japan Taxi」では、Japan TaxiのユーザーアカウントとClovaを連携させることで、音声でタクシーの配車を申し込むことができます。

Clovaスキル「フライヤー」では、本の要約サービスであるフライヤーのユーザーアカウントとClovaを連携させることで、フライヤーが提供するビジネス書の要約を音声で聴くことができます。

Clovaスキル「東急線アプリ」は、東急各線の運行状況を教えてくれるスキルです。さらに、東急電鉄の LINE公式アカウントと友だちになると、Clovaと連動して振替輸送一覧を LINEのメッセージで受け取ることも可能です。

Clovaスキル「フィンクヘルスケア」では、 LINE公式アカウントと連携することで、おすすめのヘルスケアメニューをメッセージで受け取ることができます。

音声で操作した結果のディスプレイ表示やタッチ操作が可能です。(Clova Deskのみ)

Clova Homeの対応家電機器をClovaからインターネット経由や赤外線での直接コントロールが可能です。
そして、会場では勉強会専用に開発されたClovaスキルで、参加者からの質問を読み上げるデモが行われました。

勉強会専用の LINE公式アカウントより配信されたFlex MessageからLIFFが立ち上がり、参加者が質問を投稿。登壇者がClovaに「アンケート読み上げを起動して」と話しかけてClovaスキルを起動し、質問番号を指定するとClovaが指定された番号の質問を読み上げました。
なお、LINE公式アカウントとClovaスキルのソースはこちらで公開されています。
LINE ThingsやLINE Clovaの活用に興味を持っていただいた方は
LINE Biz-SolutionsのTechnology Partner企業へぜひご相談ください。
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