セミナーレポート 2019.03.28

安楽亭とPARCOの事例に学ぶ、店舗のLINE@活用術!

2019年2月20日、東京ミッドタウンで法人事業者向けカンファレンス「LINE Biz-Solutions Day 2019」が開催された。同カンファレンスから、特に中小企業や店舗での導入が中心の「LINE@」(2019年4月よりLINE@はLINE公式アカウントとして統合)について、株式会社安楽亭(以下、安楽亭)、株式会社パルコ(以下、パルコ)の担当者が登壇したセッション「LINE@の店舗マーケティング事例と活用テクニック」の模様を紹介する。

安楽亭がメルマガからLINE@へ軸足を移した理由

焼肉を中心としたレストランチェーンを運営する安楽亭が、LINE@のアカウントを開設したのは2013年のこと。それまでテキストベースのメルマガを送信していが、本文内に張られたリンクのクリック数が減少するなど、顧客の反応が鈍化していた。同社営業企画部の松村啓太郎氏によると「テキストよりも、画像ベースのコミュニケーションに顧客の嗜好がシフトしている」という認識から、本社管轄でLINE@の導入を決めた。同社ではTwitterも活用しているが、基本的にTwitterは新規顧客向け、LINE@は既存顧客向けと、それぞれ異なる目的を持って運用している。

株式会社安楽亭 営業企画部 課長 松村 啓太郎氏

LINE@の運用は、基本的に本社側で行う。基本的に土曜日の配信で運用しているが、意外にも2018年で最も反応が良かったメッセージは、イレギュラーで行った平日配信のランチリニューアル案内だったという。(下記、画像左)

安楽亭 リッチメッセージ ランチメニューリニューアル 新商品情報

メッセージは新商品の案内やキャンペーン告知、クーポンが大半ですが、ランチメニューのリニューアルを知らせるシンプルな告知も需要があることがわかりました。アカウントと友だちになっているお客様が、それだけ普段からメニューのファンになってくれているからかもしれません」(松村氏)

 

そんな同社が、メッセージ配信で留意していることがある。それは、画像に一定量のテキストを組み合わせるという点だ。

 

「長いテキストを入れるかどうか、賛否両論あるかと思います。ただ、当社の友だちの年齢層は50〜70代と比較的高齢の方も多く、長めのテキストでもきちんと読んでくれます」(松村氏)

KPIは店舗が「友だち数」、本社が「クリック数」

安楽亭ではLINE@の効果検証に関し、大きく2つの指標を設定している。各店舗がKPIとしているのは、新規の友だち獲得数だ。重要数値だからこそ、毎月1回、店舗責任者に各店舗が新規で獲得した友だち数を告知している。売り上げが大きい店舗は友だち数でも他店舗に負けたくないという意識が強く、それに触発されるように各店舗の取り組みにも熱が入る。

 

一方、本社側では配信したメッセージに記載されているリンクのクリック数をKPIとして設定し、リッチメッセージを積極的に活用している。以前、「クーポンはこちら」というテキストを画像内に入れるのを忘れてしまった結果(画像真中のクリエイティブ)、開封率が激減した苦い経験もあった。該当のリッチメッセージよりも、その前に配信した通常テキストメッセージ(画像左)のリンククリック数の方が高かったことから、次のアクションを促す案内文(CTA)の有無が開封率を左右することを実感したという。

安楽亭 リッチメニュー CTA有り無し

現在、安楽亭ではLINE@の運用体制を変えつつあり、告知テキスト文を店舗独自で企画して配信を本社側で行う形にシフトしている。エリアごとの配信にも積極的だ。

 

「2019年2月からは、神奈川や千葉などエリアごとで展開しているキャンペーンの告知も開始し、地域のお客様とより密接なコミュニケーションを生み出し、集客につなげていきます」(松村氏)

LINE公式アカウントでは拾いきれない、店舗ごとの企画をLINE@でカバー

では、ショッピングセンター「PARCO」を運営するパルコでは、どのようにLINE@を運用しているのか。同社は若年層ユーザーへのリーチを目指し、LINE@導入以前の2013年に本社でLINE公式アカウントを開設。スポンサードスタンプを実施し、数百万人の友だちを獲得した。

株式会社パルコ 都心型店舗グループ本部CRM担当 會田 夏美氏

企業ブランディングも目的の一つとして運用しているLINE公式アカウントでは、全社規模のキャンペーン情報やタイアップ企画情報、店舗事業以外の情報も伝えていかなくてはならない。企業アカウントで、各店舗独自で行っているプロモーションや個別のショップ情報までカバーすることは難しい。そこで、各店舗の情報をユーザーに届けるため、店舗独自で運営するLINE@を開設するに至ったという。現在、パルコのLINE公式アカウントでは、全国共通の「PARCO」に関連する情報のほか、エンタテインメント事業で手がけている演劇や映画作品の紹介など、幅広い情報を配信している。

 

対して店舗側は、集客につながるメッセージに注力している。リッチメッセージに使う画像などはデザイン性が求められるため、素材の用意も配信も本社で統括して行う。また、より円滑に運用を行うための工夫として、店舗のホームページのバナー画像を全て正方形にリニューアル。ホームページ用の告知バナーが完成した時点で、LINE@のリッチメッセージで活用できる素材が出来上がるように調整している。

 

パルコの都心型店舗グループ本部・會田夏美氏によると、店舗側から配信しているメッセージの反応は各店舗によって異なる。

 

「最新ファッションの情報に敏感な若年層ユーザーが多い名古屋PARCOでは、名古屋初進出のファッション・コスメブランドのオープン告知やインスタ映えしそうなスイーツの店舗情報がより多くクリックされます。一方、浦和PARCOは40〜50代の登録率も高く、全商品10%オフなど、クーポンの反応率が高いという傾向が見られます」(會田氏)

パルコ 店舗ごとのユーザーに合わせた配信例

ただ、こうした顧客層の違いだけで反応率の良し悪しが決まらないのが、LINE@のユニークな点だ。パルコがLINE公式アカウントとLINE@をスタートして以来、最もクリック率が高かった配信メッセージは、広島PARCOで実施した「広島カープ優勝記念セール開催」の案内で、クリック率は数十%を記録したという。

 

リーグ優勝が決まった瞬間に同店のアカウント管理者が配信したもので、LINE@の持つ即時性・柔軟性を生かし、タイムリーにプッシュ通知を送ることができたため、こうした大きな効果をもたらしたといえる。地域に根ざした店舗のLINE@アカウントがあったからこそ、実現できた施策だ。

ユーザーや目的に応じてLINE@と自社アプリ、Instagramを使い分ける

パルコも安楽亭と同様、メッセージのクリック率やクリック数を効果指標としている。また、店舗が配信するクーポンは店頭で交換という方式にすることで、来店効果が測定できる。店舗によって差はあるものの、1クーポンあたり約500人の来店効果があるという。さらに、店舗がターゲットとしている顧客像とLINE@の友だちのデモグラ情報がほぼ一致していることから、會田氏は「来店者が友だちとして登録している」と評価している。

 

また、自社で運用している公式モバイルアプリ「POCKET PARCO」とLINEの使い分けにも言及した。

 

「LINEはライトユーザー、公式アプリはロイヤルカスタマーという形で、配信する情報やキャンペーンを使い分けています。たとえば、著名人をゲストに迎えて開催する店舗イベントなどの告知はLINE@で積極的に配信し、イベントの裏話やゲストへの独自インタビューは読み物として公式アプリで配信しています」(會田氏)

 

また、クーポン配信にも違いを出している。パルコでの買い物をある程度意識しているロイヤルカスタマーと、お得な特典があることが来店動機につながるライトユーザーでは、クーポンのニーズが異なるためだ。具体的には、パルコでの買い物で幅広く使えるクーポン(画像左)は公式アプリで配信し、具体的なインセンティブで店舗送客を促進するクーポン(友達限定クーポン利用でもれなく商品プレゼント等)はLINE@で配信するなどの出し分けをしている。

パルコ LINEと自社アプリのクーポン出し分け例

自社アプリの他にも、若年層に人気のあるInstagramも活用しているが、プラットフォームの特性に合わせて基本的には店舗スタッフが「今日、届けたい」情報を配信する。一方、LINE@は事前に準備した情報を、適切なタイミングで配信している。速報性を重視しているInstagramに比べ、LINE@では事前にリッチメッセージを用意し、キャンペーンスタートの前夜に配信することで確実な来店につなげているという。

気になるLINE@とLINE公式アカウントのブロック率

それぞれ独自性を生かしたLINE@の活用で、店舗来店につなげているという両社だが、積極的にアカウント運用を進めていくと、どうしても気になるのがブロック率だ。LINE公式アカウントとLINE@で、反応やブロック率に違いはあるのだろうか。

 

実は両社とも、LINE@のブロック率は公式アカウントの半分ほどだという。ユーザー側も、自分が頻繁に訪れる店舗からのメッセージには親近感が湧きやすく、実際役に立つ情報として認識していると考えられる。

 

今後の方針について、安楽亭の松村氏は「より店舗別配信に注力し、現場のやる気を引き出しながら密接なコミュニケーションを築いていきたい」とし、パルコの會田氏は「LINE@で友だちになってくれているライトユーザーに向けて、今後もメッセージを配信すると共に、LINEにはトーク画面の開封回数や頻度などユーザー行動データを共有していただけることを期待します」と述べる。

本セッションのモデレーターを務めたLINE株式会社マーケットグロース事業部の川代宣雄は、「リデザイン後は、こうした指標やオーディエンスデータの詳細も確認できるようになるため、さらなる活用を期待しています」と述べ、講演を締めくくった。