セミナーレポート 2019.09.19

中小企業のマーケティングを変えるLINEの法人向けサービス

2019年9月11日、中堅・中小企業(以下、SMB=Small to Medium Business)向けのイベント「LINE Biz-Day for SMB」が東京・虎ノ門ヒルズフォーラムで開催された。同イベントにて発表された法人向けサービスの最新情報を、Keynoteを中心に紹介する。

メイン会場の様子。当日は立ち見客が出るほど多くの人々が来場した
メイン会場の様子。当日は立ち見客が出るほど多くの人々が来場した
会場にはカフェコーナーや商談が行える各企業ブースも併設された

リアルとデジタルが融合! After Digital時代のマーケティング

Keynote冒頭に登壇したLINE株式会社 代表取締役社長CEOの出澤剛は、テクノロジーの進化によってリアルとデジタルの融合が進む中で、今後は「After Digital」の時代が到来するという藤井保文氏の著書※における見解を引用しながら、LINEが目指すビジョンを述べた。

  • 『アフターデジタル - オフラインのない時代に生き残る』(株式会社ビービット 藤井保文、IT批評家 尾原和啓/日経BP社)

「進化するテクノロジーを活用し、LINEならではの切り口で中堅・中小企業や店舗、地方自治体などが抱える経営課題の解決を支援したいと考えています。企業は、規模や業種を問わず多くの課題に直面しています。現在、LINEはこうした企業の悩みを解決するため、さまざまな法人向けサービスを開発しています」(出澤)

LINE株式会社 代表取締役社長CEO 出澤 剛

コミュニケーションプラットフォームであるLINEならではの訴求力を生かし、企業や自治体での集客分野を支援する。LINE公式アカウントのほか、イベント当日に発表されたデジタルチラシサービス「LINEチラシ」や、エリア内にいるユーザーに最適な提案ができる「LINE Beacon」など、ユーザーとコミュニケーションを取りながら集客に結びつけることが可能だ。

住民とつながる自治体のLINE活用法

続いて登場したLINE株式会社 執行役員 広告ビジネス事業担当の池端由基は、出澤の話を受けて地方自治体や企業でのLINE活用事例について語った。

LINE株式会社 執行役員 広告ビジネス事業担当 池端 由基

コミュニケーションプラットフォームとして認知されているLINEは自治体でも導入が進んでおり、現在、自治体のLINE公式アカウントのアカウント数は約700件も存在する。


東京都渋谷区では子育てに関する情報発信や、住民からの問い合わせをLINE公式アカウントで受け付けており、回答手段の一つとしてAIが活用されている。また福岡県福岡市では、災害などで被害を受けた道路やガードレールなどの通報をLINE公式アカウントで受け付けているほか、千葉県市川市では住民票取得をLINE公式アカウントで受け付ける実証実験に取り組んでいる。

自治体だけでなく、地域にある店舗や企業もLINE公式アカウントを通じてユーザーとのコミュニケーションを取っている。LINE公式アカウントの認証済みアクティブアカウント数※は全国で17万件以上にのぼる。人口に比例して都道府県ごとに数は異なるものの、国内のあらゆるエリアでLINE公式アカウントが開設されており、ユーザーとの情報接点になっていることが分かる(下図参照)。

  • 2019年4月〜6月の期間中にメッセージ配信またはユーザーへの返信を行ったアカウント数の合計

全国のLINE公式アカウントを、県庁所在地に基づきマッピングした分布図。円が大きく、色が濃い部分の地域ほどLINE公式アカウントの数が大きいことを示している

「今後も、地域の企業や店舗とユーザーをつなげる環境づくりに取り組んでいきます」と宣言する池端は、LINEを使って最適な店舗を検索できる「Local Search」、LINE上で興味関心事やライフスタイルの共通点をベースにグループトークや情報交換が楽しめる「OpenChat」の機能を活用した法人向けサービスとの連携など、最新のサービス情報を紹介した。

LINEの対象タブ内で特定の場所を検索すると、周辺にあるLINE公式アカウントを開設している店舗が検索できる「Local Search」機能は2019年11月にリリース予定
2019年8月にリリースされた「OpenChat」。特定のコミュニティーや地域などに紐付いた情報共有、情報発信ツールとして、法人向けサービスとの連携も視野に入れている

SMB分野の成功企業が続々登場、LINEの広告事業の進化

SMB領域を担当するLINE株式会社 広告事業本部 マーケットグロース事業部 事業部長の川代宣雄は、LINEの広告事業の成功事例と今後の事業戦略について説明した。


「LINEの広告」といえば、これまで「大手向け」「費用が高額」「運用が難しい」という印象があった。こうした評価に対し、LINEではSMBを含むすべての企業や組織が当たり前かつ簡単に活用できるように、機能やサービス強化に努めてきた。その結果、下記のような成功事例が続々と集まってきている。

「こうした成功事例が生まれた背景には、2019年4月からスタートしたLINE公式アカウントへの統合や、SMB領域において知見を持つ株式会社CyberAceや株式会社イーエムネットジャパン、GMOアドパートナーズ株式会社、ソウルドアウト株式会社との戦略的パートナーシップの締結などがあります。LINEは今後もSMB領域に対して、さまざまな機能拡張を続けていきます」(川代)

LINE株式会社 広告事業本部 マーケットグロース事業部 事業部長 川代 宣雄

例えば、基本的な項目を登録するだけでユーザーからの問い合わせにAIが自動応答してくれる「シンプルQ&A」(リリース済、詳しくはこちら)、ダウンロード数に応じたLINEスタンプ施策が展開できる「LINE CPDスタンプ」、さらに2019年11月には1万円の少額出稿から始められる「友だち追加広告(LAP)」などをリリースする。また、LINE Ads Platformのセルフサーブ機能により、オンラインでのアカウント開設や配信設定、クレジットカード決済も可能になる予定だ。

ダウンロード数に応じた従量課金制のスタンプ「LINE CPDスタンプ」。200万円から出稿が可能で、掲載期間の制約がなく、キャンペーンや商品のインセンティブとして指定数を配布することができる

店舗の集客やリピートにもLINEのサービスを

Keynoteの最後には、広告事業本部でSPセールス事業部マネージャーを務める橋本久嗣が登壇。「店舗のLINE活用」をテーマに、店舗の経営課題を解決する「LINEチラシ」について紹介した。


「LINEチラシ」とは、LINEアプリ内に店舗のチラシ情報を配信するサービスで、機能別に「ADフォーマット」、「メディアフォーマット」(10月末以降リリース予定)、「メッセージフォーマット」(2020年以降リリース予定)の3種類のフォーマットがある。

一部案内中である「ADフォーマット」はLINEのタイムライン面にチラシ広告を表示させるサービスで、先行して京急百貨店が2019年7月に試験導入を実施。結果、トライアル期間中の新規友だち追加数が通常の2倍を記録し、LINEチラシで告知された催事の売り上げも前年比で109%伸長したという。

「商圏エリアを設定した上で手軽にWebチラシが作成できるので、紙のチラシとリーチを補完し合うことができます」(橋本)

LINE株式会社 広告事業本部 SPセールス事業部 マネージャー 橋本久嗣

また、10月末以降にリリース予定のメディアフォーマットは、月間5,600万人のユーザーを抱えるLINEウォレット面に掲載されるチラシサービスで、従来のデジタルチラシに比べて、よりパーソナライズ化された施策が可能となる。こちらもイオンフードスタイル港南台店の協力を得て実証実験を行った結果、通常時と比較して来店客数は約2倍を記録した。

「LINEチラシ」以外にも、店内などオフラインでの訴求方法として「LINE Beacon」を活用した事例、再来店促進としてLINE公式アカウントのプッシュ通知やクーポンを活用し、月間100人以上の予約客を確保している飲食店の事例などが紹介された。


Keynote終了後は休憩を挟み、株式会社京急百貨店が語る「これからのチラシ集客、『LINEチラシ』の活用法」、株式会社BAKEが紹介する「お菓子のスタートアップ BAKEが目指す、LINEとファンコミュニティ形成」、LINEのテクノロジーパートナーが登壇した「新しい顧客体験を生むための、LINEテクノロジー活用」などのセッションが開催された。(上記セッション詳細は、別記事として後日公開予定)


今後、LINEは中堅・中小企業のマーケティングを支援するサービスをより一層、強化していく方針だ。


※本記事内で紹介した各種数値は、すべてセミナー開催時点のものです。


(取材・文:岩崎史絵、写真:高橋枝里)