サービス情報 2018.11.07

LINE Payで屋台の支払いが可能にLINEが挑むキャッシュレス社会

LINE Fukuoka株式会社 コーポレートグロース室 経営企画チーム
キャッシュレスFUKUOKA プロジェクトリーダー 南方 尚喜

LINE Pay はLINEの友だち同士での送金、街中の加盟店での決済やインターネットショッピングの支払いに利用できるモバイル送金・決済サービスです。店舗側としても端末や決済手数料などのコストを抑えて導入できたり※、顧客のバーコード/QRコードを加盟店側が読み取るか、印刷して設置し、顧客に読み取ってもらうだけでスマホのみで簡単に決済が完結するという特長があります。

    • 「QRコード」は、デンソーウェーブの登録商標です。
    • 中小企業向けに展開している「店舗用アプリ」「プリントQR」「据置端末」でのご導入のみ、2021年7月末まで決済手数料無料で展開しています。「据置端末」は月額端末利用料がかかります。

このLINE Payを活用して、2018年6月に福岡市の支援のもとLINEグループはキャッシュレス社会実現に向け、実際に公共施設や民間施設にLINE Payを導入する実証実験をスタートしました。行政の協力で実現したこの新たな取り組みについて、LINE Fukuoka株式会社 経営企画チーム 南方尚喜(以下、南方)に話を聞きました。

――今回の取り組みは、どのような経緯で実現したのでしょうか?

南方 2016年、福岡市との間に情報発信協定が締結されました。福岡市が行うさまざまな情報発信を、LINEがサポートしていくという協定です。具体的には、福岡市のLINE公式アカウントを立ち上げ、そのプロデュースをLINE Fukuokaが行いました。福岡市の公式アカウントは順調に規模を拡大し、現在では150万人以上の友だち登録をいただいています。さらに、2017年にはLINEが福岡マラソンのオフィシャルコミュニケーションパートナーとなり、イベントをサポートする取り組みも行ってきました。

そんな中、2018年5月8日に高島宗一郎現福岡市長が福岡市を「キャッシュレス都市」にするという構想を発表しました。構想実現のパートナー企業を公募する運びとなり、LINEグループが各社参加のコンペを勝ち抜いた結果、参加企業中唯一、公共施設、民間施設の双方で採択されることができました。6月には公共施設へのLINE Payの導入が正式に開始されました。

さらに2018年8月、情報発信などこれまでの取組みの枠を超えて「AIやFintechなどの先端技術を活用し、より豊かで便利な未来志向のまちづくりに向けて共働する」ことを目的にLINEと福岡市の間で包括連携協定を締結し、AIやFintech分野でさまざまな実証実験を行っていくことになりました。具体的に動いているプロジェクトには、今回のLINE Payを活用したキャッシュレス化への取り組みの他に、AIチャットボットを活用した粗大ごみ収集受付の事例なども、LINEが提携し、サービス提供を行っています。

――今回の実証実験の意義についてどうお考えですか?

南方 今後、少子高齢化による労働人口減少などの要因から経済が縮小することを考えると、福岡市の、ひいては日本全体の課題として挙げられるのが、中小企業の生産性向上です。そのための対策の一つが、業務効率化による人手不足情況の緩和やマーケティング精度向上が期待できるキャッシュレス化です。特に福岡市の法人は99%が中小企業であるため、キャッシュレス化への期待値は高いと考えています。

新しい決済手段を普及させるには、莫大な時間と労力が必要です。例えば、クレジットカードの利用が一般的になるのにも10年、20年という歳月を必要としました。提供する企業側だけの努力だけでは、キャッシュレスも同様の道をたどるかもしれません。しかし、今回のように福岡市という行政に協力いただき、市民の方にも利便性を実感してもらいながらさまざまな実験ができる機会は大変意義深いと考えています。

――実際にLINE Payが導入されている施設と、今後導入予定の施設はどこですか?

南方 すでに福岡市内の動物園、博物館、美術館、市営の駐輪場などの公共施設には、LINEが市から単独採択を受けて導入が完了しています。また、百貨店、屋台、福岡空港、大学、神社などにも導入され、生活のあらゆる場面で利用いただけるようになりつつあります。

少し面白いところですと平成筑豊鉄道というローカル線にも導入されています。鉄道会社への導入は初の事例となります。これまで、ローカル線や中小企業は非接触の決済を行うためのインフラを導入しても、採算が取れないという課題がありました。導入コストを抑えられるLINE Payによって、キャッシュレス化が実現することになります。今後は、博多旧市街など観光地やタクシーにも導入予定です。

――福岡名物の一つとも言える屋台の決済でも使えるということですが、どのぐらいの屋台に導入されているのでしょうか?また、利用状況は?

南方 現在、福岡市内には100店舗ほどの屋台がありますが、導入済みが16店舗、導入が決定している屋台を含めると30店舗ほどになります。利用状況は店舗によって異なりますが、半額キャッシュバックキャンペーン(2018年11月30日まで)など大胆な施策により利用件数は着実に伸びてきています。

――屋台へ導入してみて、ポジティブな影響はありましたか?

南方 屋台はある意味、福岡市のシンボリックな存在である反面、会計がわかりにくいなど、少しネガティブなイメージを持つ人がいるのも事実です。キャッシュレス決済をきっかけに、人々のそんなイメージが少しずつ変わってきているケースも増えているようです。導入していただいている屋台の店主様からも、「今まで来なかった層のお客さんが来るようになった」という声もいただくようになりました。

また、屋台という言葉から連想するアナログなイメージと、LINE Payによるデジタルなコミュニケーションのギャップが大きいこともあり、各メディアから注目され、取材などのお問い合わせも増えています。

――今後、福岡市とLINE Payの取り組みとして実現したいことはありますか?

南方 最も強化したいのは、行政サービスの効率化です。粗大ゴミ収集受付の取り組みも進んでいますが、まだ決済まではシームレスにできていません。粗大ゴミ収集の需要は引っ越しシーズンに高まりますが、引っ越しの際は粗大ゴミ以外にも住民票の異動など、さまざまな行政手続きが必要になります。そうした手続きと決済を、全てLINE上で完結できるようにしていきたいですね。

また、LINE Payの導入が進んでいる屋台でも、今後の構想があります。屋台の中には客が押し寄せ、行列ができるほどの人気店があります。そこで、顧客の待ち時間を少しでも減らすため、店の空席予約をLINE経由でできるようにし、支払いはLINE Payを使ってもらう――。LINEがスマホでの決済事業に乗り出した背景には、決済だけでなく、その前後のコミュニケーションを組み合わせた顧客体験を提供したいという思いがあります。今後もLINEグループとしてそこに挑戦していきたいです。

インタビュー後、実際にLINE Payを導入している福岡・天神の人気屋台「喜柳(きりゅう)」の店主である迎敬之氏(以下、迎氏)に、LINE Payを活用した感想を伺いました。

福岡・天神の人気屋台「喜柳(きりゅう)」
店内にLINE Pay決済用のQRコードが掲示してある

――LINE Payの利用状況と、導入してみての感想はどうですか?

迎氏 結構使われるよね。1日に1組は使うお客さんがいます。他のキャッシュレスサービスと比べて1番利用されていると思いますよ。

――LINE Payを導入してみて良かった点はありますか?

迎氏 QRコードを印刷して、お客さんにスマホをかざしてもらうだけだから、楽だよね。お釣りを計算しなくていいし。やっぱり料理をするから、お金を触っちゃうと毎回手を洗って料理に戻らなくちゃいけない。QRコードだと、手が汚れなくていいよね。

――今後も使い続けたいと思いますか?

迎氏 今後も使っていきたいですよ。LINE Payと組んでキャンペーンとかもやってみたいですね。やっぱり、福岡の外から来たお客さんに楽しんで帰ってほしいから、便利になることは今後も積極的に試していきたいと思います。

福岡・天神の人気屋台「喜柳(きりゅう)」の店主である迎氏