LINEが法人向けアカウントを統合した背景――ユーザー体験を高めるプラットフォーム構想とは?
*当コラムは株式会社フィードフォースとの共同企画として執筆されたものです。
2018年6月に開催された「LINE CONFERENCE 2018」で、ユーザーと企業・ビジネスオーナーの距離を縮めることを目的に「Redesign(リデザイン)」として、法人向けアカウントの統合と月額費用0円からの新プランが発表されました。幅広い企業が多様な機能を利用しやすくなる一方、無料メッセージ通数を超える追加メッセージは通数課金となることから、LINEの活用方法を再考する機会となりました。
今回のリデザインにはどのような背景があり、今後企業はLINE公式アカウントをどのように活用していくべきなのか。LINE株式会社 コーポレートビジネスグループ ビジネス開発本部 ソリューションコンサルティングチーム マネージャーの高木祥吾(以下、高木)に話を聞きました。
インタビュアー:株式会社フィードフォース 岡田風早
適切な情報提供を促進できるように、機能とプランを全面的に刷新
――今回、LINEの法人向けアカウントの統合と新プランの発表に踏み切った背景や目的をお聞かせください。
高木 これまでLINEでは法人向けアカウントとして、費用や機能が異なる複数のアカウントを提供しており、中でもLINE公式アカウントとAPI型LINE公式アカウント、LINE ビジネスコネクトアカウント、LINE カスタマーコネクトアカウントは国内で540以上のアカウントが開設されています。一方、数十万円~数百万円の月額固定費がハードルとなって幅広い企業での導入が進まず、管理画面の機能も不十分でメッセージ配信の効果検証やPDCAを回していくことが難しいという課題もありました。そこで、法人向けアカウントのプランから機能面に至るまで全面的に見直すフェーズに入ったと認識し、今回のリデザインに踏み切りました。
加えて、「LINE Ads Platform」や「LINE Sales Promotion」などの法人向けソリューションが登場してきた中で、あらためてLINE公式アカウントの役割をユーザーごとに適した情報を提供できるサービスとして見直していく必要がありました。

API配信やチャット機能が充実。目的に合わせた柔軟なアカウント運用が可能に
――法人向けアカウントの統合に関して、LINE公式アカウントを既に利用している企業や、今後利用を予定している企業に伝えておきたいポイントはありますか?
高木 まず、ユーザーとのコミュニケーションに特化した機能が使いやすくなっています。API利用申込みがオンラインで完結できるほか、今までLINE@でしか提供していなかった1:1トーク機能もチャット機能として提供することになり、全プランで利用可能です。
今までLINE公式アカウントの運用といえば、LINEスタンプで友だちを多く集めて伝えたい情報を一斉配信するという方法が一般的でした。しかし、ユーザーにとって有用なメッセージが配信されなければ、いずれブロックされてしまい長続きしません。LINE公式アカウントをユーザーが必要とするサービスにしていくために、APIやチャット機能の提供を通じてOne to Oneのコミュニケーションを促進し、ユーザーのエンゲージメントを高めて長期的な関係構築につなげたいと考えています。
また、今回の統合によりプランや機能など、サービス設計が非常にわかりやすくなりました。統合後のLINE公式アカウントでは、フリープラン・ライトプラン・スタンダートプランから最適なプランを選択でき、アップグレードとダウングレードも可能です。配信量が少ない時期はプランを下げて定常的にコストがかかる状態を回避したり、配信量が増える時期には一時的にプランを上げたりと柔軟な運用が可能です。

LINEをフルファネルで活用し、費用対効果を見ていくことが重要に
――今回のプラン変更で、各プランの無料メッセージ通数を超えた追加メッセージは通数課金となりますが、この変更にはどのような意図があったのでしょうか?
高木 LINE公式アカウントをユーザーごとに適切な情報提供ができるサービスとして改善し、プッシュメッセージ1通あたりの価値が高まるようなサービス設計を追求したという背景があります。そのため、通数課金については企業側からのプッシュ配信が課金対象となり、ユーザーのアクションが起点となる配信は課金対象にはなりません。
今回のプラン変更以前の流れとして、Botと対話するユーザーに対してメッセージを返信するAuto ReplyというAPIを提供しており、このAPIを経由したメッセージも課金対象ではありませんでした。ここには、ユーザーが自発的にLINE公式アカウントを活用したくなるようなコミュニケーション設計を企業が積極的に行うことで、結果としてユーザーにとってより良いサービスを提供したいという思いがあります。

例えば、購入完了や商品発送を通知するようなプッシュ配信は通数課金対象になりますが、ユーザーにとっては便利なサービスメッセージです。だからこそ、完了通知をして終わりではなく、通知後さらに継続利用したくなるようなサービス提供を考えていくことが大切です。具体的には、トークルーム内でBotと対話することで簡単に知りたい情報が得られたり申し込み手続きができたりするような、LINE公式アカウントの利便性を訴求していけば、ユーザーのエンゲージメントが高まりLINE経由の購入が増えることにつながるはずです。今後はメッセージ1通のコストをピンポイントで考えるのではなく、カスタマージャーニーを意識して活用することが重要だと考えています。
また、認知の獲得であればLINE Ads Platform、コンバージョンにつなげるきっかけとしてのLINEポイント、コンバージョン後のCRMやカスタマーサポートとしてのLINE公式アカウントといったように、各ファネルに適したソリューションを提供しているので、それぞれを横断して利用することも可能です。その上で、メッセージ配信のコストだけを見るのではなく、LINEをフルファネルで活用した上で費用対効果を見ていくことが大切だと思います。

理想はユーザーが使いたくなるLINE公式アカウント
――今後LINE公式アカウントの活用方針を検討される方へのアドバイスや、参考になるベストプラクティスがあれば教えてください。
高木 プッシュ配信が多いのか、BotでReplyするケースが多いのかなど、コミュニケーション設計のバランスを考慮してプランを選択する必要があります。また、APIを積極的に活用している企業であれば、LINE Front-end Framework(LIFF)のようなLINEアプリ内で動作するウェブアプリを活用して、メッセージ配信だけに縛られないコミュニケーションが実現可能です。
LIFF活用については、福岡市の粗大ごみ受付Botがとても良い事例です。LINEログインのほか、LIFFやFlex Message、クイックリプライなどのAPIを活用して、LINEのトーク上で粗大ごみ収集の申し込みが手軽にできます。

リデザインで目指す理想は、ユーザーが必要とするLINE公式アカウントです。1通のプッシュメッセージの価値を高めると同時に、ユーザーから自発的に使ってもらえるよう、企業のサービスとLINE公式アカウントをうまく連携した事例が増えていくことを願っています。
――統合後のLINE公式アカウントへの移行は、具体的にどのようなスケジュール感で進めていく予定でしょうか?
高木 2018年12月3日から開始したLINE公式アカウントの開設は、従来の公式アカウントを利用していた企業向けに、最初の移行フェーズとして案内しています。その後、時期は未確定ですが春以降を目安に、従来のLINE@アカウントを利用している企業向けに移行の案内ができる体制を整える予定です。そして、従来のLINE公式アカウントは2020年3月、LINE@アカウントは2019年8月を目安にすべて統合後のLINE公式アカウントに移行完了となるスケジュールで進めています。

(画像引用:LINE アドセンター 「LINE アカウント 2018年12-2019年3月期 媒体資料」P42)
LINEをフルファネルで活用できるように、機能の強化を推進
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
高木 法人向けアカウント以外にもさまざまなソリューションが出てきている中で、それらをポイントごとにではなく、フルファネルで提供できるように仕組みやシステムをさらに整えていきたいです。その第一歩が今回のリデザインですが、今後さらにプラットフォームとしての機能を強化していきたいです。さらに、地方の企業にもマーケティングやCRMのツールとしてLINE公式アカウントを使ってもらうことで、より多くの企業とユーザーとの距離を近付ける存在になれればと考えています。