サービス情報 2019.09.24

CTR予測と自動配信で広告運用が変わる?API化で広がるLINE広告の可能性

(左から)
株式会社セプテーニ・オリジナル エンジニア 堀浩雄氏
Septeni Japan株式会社 メディア本部 コンサルタント 服部良治氏
LINE株式会社 Sales & Market Strategyチーム 北出庫介

株式会社セプテーニ(以下、セプテーニ)は、LINEが提供する各種法人向けサービスの販売・開発のパートナーを認定する「LINE Biz-Solutions Partner Program」の「LINE広告(旧LINE Ads Platform)」部門においてAd Tech Partner*に認定されている株式会社セプテーニ・オリジナルとともに、LINE広告のAPIを活用して広告運用を自動化するツール「PYXIS(ピクシス)」で、クライアントのマーケティング支援を行っています。

 

2019年6月には、ディープラーニングを活用し、新規制作した広告クリエイティブのCTR(Click Through Rate:クリック率)を事前に予測することができるツール「Odd-AI(オッドアイ)」と連携し、「Odd-AI」の予測をもとに、「PYXIS」を通じてCTRの高い広告クリエイティブを順に掲載するとともに、広告配信後の精査および運用まで自動的に行うことが可能となりました。

 

PYXISとOdd-AIを組み合わせることで、広告運用におけるどのような課題が解決できるのか。また、API化によりLINE広告の可能性がどのように広がるのか。セプテーニとLINEの担当者に話を聞きました。

  • LINE広告のAPI経由の売上実績や効果改善の事例、実装機能の内容などを基準にLINEが認定するパートナー

AI(ディープラーニング)を用いたCTR予測ツール「Odd-AI」

近年、デジタルメディアの特性やアルゴリズムの多様化に伴い、運用型広告における広告フォーマットや配信手法は複雑さを増しています。そのため、企業の担当者は広告効果を維持するために大量のクリエイティブを制作し、日々の配信作業に追われるようになりました。

 

セプテーニの「PYXIS」は広告運用のパフォーマンス向上を目的に開発されました。現在は業界・業種を問わず、さまざまな企業に導入されています。

 

「PYXISではLINE広告のAPIを用いて、広告運用からレポーティングまで支援します。設定した条件に応じて、入札単価を自動変更する機能や、目標値を超えている広告を自動停止する機能を搭載しているので、運用の効率化やKPIの改善につなげることができます」(服部氏)

服部氏の写真

Septeni Japan株式会社 メディア本部 コンサルタント 服部良治氏

さらに、新たに開発した広告クリエイティブソリューションツール「Odd-AI」をPYXISと併せて活用することで、新規クリエイティブの配信前にそのCTRを予測した上で、効果の高いクリエイティブから優先的に自動配信できるようになりました。

 

「AI(ディープラーニング)を用いたOdd-AIは、セプテーニが保有する過去の運用型広告の膨大な配信実績におけるテキストや画像、ターゲティング種別、季節性などのあらゆるデータを学習し、CTRの予測精度を向上させています。これによりクリエイティブの配信検証プロセスを省略でき、広告効果を飛躍的に向上させることが可能です」(堀氏)

堀氏の写真

株式会社セプテーニ・オリジナル エンジニア 堀浩雄氏

「Odd-AI」の導入によりCTRが15%上昇

ある女性向けコスメクライアントの事例では、2019年6月中旬にOdd-AIを導入。導入日を除く前後1週間を比較してCTRが平均5%アップ、特に「Square」(正方形サイズ)のクリエイティブに限定すれば平均15%アップするなど、高い広告効果を上げています。

Odd-AIを使った広告配信フロー図

「CTRが高いクリエイティブの傾向をつかめれば、制作の的を絞ることで運用全体のコスト軽減を見込めます。Odd-AIでは効果の良いクリエイティブの選定、PYXISでは選定されたクリエイティブの配信開始・停止の切り替え、入札作業など、これまで多くの時間を費やしていた業務が代替でき、担当者は課題の設定や施策の検討など、『人にしかできない業務』に集中することができるでしょう。

 

PYXISとOdd-AIを組み合わせることで人間と機械が行う業務を区分し、広告運用の効率化とパフォーマンスの向上に大きく貢献できると自負しています」(服部氏)

 

プラットフォームを提供する側として、LINEの北出はさまざまな活用メリットを生み出すPYXISとOdd-AIを次のように評価します。

 

「配信に合わせて最適なクリエイティブを精査し、しかも手間をかけずに自動で行えるのは運用担当者にとってメリットが大きいと感じます。また、PYXISがLINE広告のAPIを活用していることからわかるように、オペレーションを簡略化し、効果を上げるという点で『APIの利用』は今後もその重要性がますます高まるはずです」(北出)

北出の写真

LINE株式会社 Sales & Market Strategyチーム 北出庫介

自動配信の利便性を広く伝えることが今後の課題

「Odd-AIの実装により、クライアントからは『運用がよりスムーズになった』という声をいただいています。

 

今後は広告クリエイティブのCTR予測にかかる時間を、現在のリアルタイム予測から、予習させるようなイメージでさらに短縮したいと思っています。また、対応するフォーマットが現在は静止画のみなので、動画クリエイティブへの対応も視野に入れて、クライアントの広告運用をさらに支援できるよう改良を加えていきます」(堀氏)

 

技術面の改良のみならず、今後、導入企業を増やしていくためには、「広告配信に携わる人たちの意識変革も必要」と服部氏は語ります。

 

「自動化で広告効果が出なかった時のことを考えると、結局、自身の経験則から手動で配信する方が良いというご意見があるのも承知しています。しかし、安定して高い広告効果を上げ、それを再現するまでのスピードを考慮すると、AI(ディープラーニング)によるCTR予測を行った上で自動配信する方が確実です。そういった点をお伝えし、ご理解をいただくことが重要だと思います。

 

また、LINEはコミュニケーションアプリだけでなく、ゲームや人材サービスなど、多種多様な分野のデータを保有しています。そうしたデータを広告運用に生かすことができれば、クライアントの目標達成に一層貢献できるのではないかと思います」(服部氏)

座談会の風景

最後に、LINEの北出は広告運用における「データの活用」について言及しました。

 

「国内の月間利用者数8,300万(2019年12月末時点)というLINEが持つデータ活用に期待しているという声を頻繁にいただくのですが、それは『クライアントの事業の成長』という目的を達成するための手段であって、『データを使うこと』を目的にすべきではないと考えています。

 

配信と分析の両軸で広告運用を行い、その中で得られたデータを多方面で使いながら運用に組み込み、PDCAを回していく。そうした有効なデータの活用法について、セプテーニをはじめとするパートナー企業の皆さんと議論していきたいと考えています」(北出)

 

(取材・文:相澤良晃、写真:中村宗徳)